
く使うための演出家なのです。私どものホールでは、主催者に対して「できません」という言葉を使ってはいけないと職員に言い聞かせています。どうしたら主催者が望んでいることができるのかを、一緒に考えてあげることが我々の仕事ではないかと思います。そういう意味での演出家だと考えています。
次に、私どもの三重県総合文化センターの紹介をしたいと思います。まず、約2000席をもつ音楽専用の大ホールがあり、70人くらいが入れるオーケストラピットを持っています。舞台は間口と奥行きが10間×10間で、残響時間が2.2秒です。
また、中ホールは約960席あり演劇専用ホールになっています。舞台の床は黒いオイルステンでできており、間口が10間奥行きが14間あります。舞台機構としては直径9間の廻り舞台があり、その上に6間と2間の大迫りが2つと、2間と1間の小迫りが2つあります。加えてスライディングステージが迫りの上に移動してくる大変複雑な多面舞台機構になっています。
そのように立派な設備を備えている舞台であっても、東京から来る劇団は、わざわざ黒い舞台の上に地がすりを敷き、その上に舞台のセットを組み公演をして帰っていきます。そのため、これらの舞台機構を使いこなした公演を自前で創るため、演劇塾をつくり演出家を招きました。これは、俳優を養成するためではなく、技術者や町を興してくれる人材を創り出すことが目的です。それから、小ホールは約300席の実験小劇場で、可変舞台構造になっています。また、500人ぐらいの多目的ホールがあり、さらに、10m×10mのテントが7つ張れる広い野外ステージがあります。
大ホールと中ホールについては、舞台袖の操作盤が下手2階奥にあり、舞台が全く見えない状態で緞帳やバトンの上下をしています。しかも、綱場がなく油圧のモーターを使い、バトンの上下が大変静かなため非常に危険です。そのため、私どものホールでは、テクニカルディレクター(TD)、オペレーティングスタッフの他にアートスタッフ、ライティングスタッフ、サウンドスタッフの計5人が大ホールに張り付いています。中ホールには、さらにオペレーティングスタッフとライティングスタッフが1名づつ加わり7名の体制で管理をしています。結局、舞台の管理スタッフは施設全体で19名います。
ただ、1つの業者では人数的に抱えきれないため、9つの舞台業者に協同組合を作ってもらい、19名の舞台技術員をまとめて委託しています。また、経験が3年以上のスタッフを派遣すること、厚生年金保険、労働災害保険、損害賠償保険をかけていることを会館側からの条件にしています。当初、厚生年金保険をかけている業者は2社、労働災害保険をかけているのが1社だけでしたが、2年後の現在では、9社すべてがこの条件を満たしています。
また、企業に属する舞台技術員、高校演劇部の先生、看板装飾屋、劇場の管理職員の4者で構成している三重県劇場技術者協会を作りました。分担としては、劇場を管理する問題は私たち会館が中心になります。技術的な問題、技術の向上や研修については、技術者協会が担当します。企業の労働条件などは協同組合で話し合いを持ちます。つまり、協同組合と技術者協会、文化会館を運営する財団
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