
講義3「貸館事業における舞台技術」
講師 谷口忠孝(三重県劇場技術者協会会長)
文化というと文化庁の特許のように言われていますが、最近では、文化を切り口にした行政を進めることが流行しています。例えば、国土庁が中心になるお祭りやイベント、通産省による外国の芸術文化の輸入、またはそのための舞台技術産業、自治省による文化の村おこしなどがあります。ようやく、文化がもてはやされ、国から注目される時代になってきました。
文化行政に携わる職員としては、行政機関の中でも遠い所へ追いやられたような悲しい思いをしていた人が、文化会館(当時は市民会館や公会堂と呼ばれていた)に多くいた時代もありました。しかし、最近では文化が地方行政の中でも徐々に認められてきており、私どものような専門家を呼び、文化を担当させるような市町村や都道府県が増え始めました。
私は、八尾市文化会館から現在の三重県総合文化センターに呼ばれ、舞台企画指導監ということで劇場の運営や舞台技術のこと、あるいは事業の担当をしています。しかしながら、このようなパブリックホールを管理していると、様々な問題がでてきます。今日は、その問題について話をしたいと思います。
始めに、劇場というところは基本的には何をやってよいところであり、例えば、演出上必要であれば、舞台に穴をあけてもよい)ところであると私は考えます。一番大事なのは、観客に感動を与えることなのです。しかしながら、パブリックホールは、〜をしてはいけない、〜の条件が整っていないといけないという条例があり、このような条例に基づいて建設されたパブリックホールが、何でもできるわけがないということも頭に入れておかなければなりません。つまり、パブリックホールならば、してはいけないことがあるのは当然のことなのです。ただ、そのような条件の中でパブリックホールをどのように運営していくかということが問題なのです。
例えば、舞台の上で焚き火をしてはいけないということはご承知のとおりですが、イギリスのロイヤルシェイクスピア劇場が「オセロウ」という芝居を公演したとき、たいまつが燃え上がるシーンがありました。これを日本で公演しようとすると、消防法という規制にひっかかり、さらに、全国のホールの館長の多くは、そのような焚き火の使用を許可しないでしょう。しかしながら、これをしてはダメですとか、これはできませんと言うことがみなさんの仕事ではないのです。そのときに、我々のように会館を管理している者にとって、3m燃え上がる焚き火を使用しないで、それに代わる劇的状況をどのようにして創り出すかを考えることが大切なことなのです。
つまり、地域や町の文化団体のいろいろな欲求について、どうすれば満たしてあげられるかを考えることが、会館管理者にとっての大きな仕事だということを分かって欲しいのです。言い換えると、劇場を管理しているということは、劇場を管理している職員が演出家であるということなのです。地域の文化会館をうま
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