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考察

1)第2中手骨骨量測定(MD法-DIP法)の有効性

Microdensitometry(MD)は、井上等により開発された骨量測定法である。骨量とは骨の中の鉱質(ミネラル)量をいい、骨密度とは単位体積内の骨量、即ち骨鉱質密度(bonemineraldensity,BMD)をいう。MDでは骨密度に相当するΣGS/Dや骨皮質幅指数(metacarpalindex,MCI)等の指標が得られるが、通常ΣGS/Dが比較される。撮影・現像したXフィルムを解析センターに送付して第2中手骨の中央部の骨量が測定されるが、フィルム濃度にMicrodensitometerを用いるのがMD、高解像度型カメラを用いるのがdigital image processing(DIP)、荷電結合素子を用いるのがcomputed X-rayn densitometry(CXD)である。

今回はDIP法により測定された。骨量低下は主として海綿骨部位で起こるので脊椎骨密度の測定(二重X線吸収測定法、dual X-ray absorptionmetry,DXA法)が最善とされている。従って中手骨骨量の測定が脊椎骨密度や脊椎体の変化を反映する指標となり得るかが問われる。白木等の研究によるとMD法パラメータの内、骨密度の指標であるΣGS/Dは優れた感度で骨密度を識別・測定し得るが、MCIは感度のやや低い指標であることが示されたとの結果を発表している。

今回の骨量測定の目的は骨粗鬆症の検索ではないが、下記の基準値を参考にしながら骨塩量の増減を考察した。骨粗鬆症の境界領域:30歳代健常者の中手骨骨密度の平均値の-2SDである中手骨骨密度=2.41〜2.30mmA/l、骨粗鬆症:2.30mmA/l以下。他方、MCIでは40歳代が0.551±0.056,50歳代が0.513±0.043,60歳代が0.432±0.037,70歳代が0.387±0.042,80歳代が0.354±0.019が基準値である。
MDは検者・被検者双方にとり利便性に優れ、発注で得られる骨塩量積分値は診断・治療上有用性に富むの2点から限られた諸条件下の離島診療機関でも実施され得る方法といえる。

2)変形性腰椎症及び変形性膝関節症の病理と病態

これ等の疾患は加齢に伴う病変であるが、疹痛を主訴とするため罹患者に限らず、臨床医にも神維疾患と理解し、対処する。例えば老年医学では変形性脊椎症を脊椎根症或いは脊髄症と意義づけている。これ等疾患の病因論は未開拓とはいえ、病態は整形外科学的に解明されつつある。整形外科学では脊椎変性疾患を脊椎支狩組織の加齢変性とそれに起因する神経圧迫症状と考える。山本は定義として、病理学的に摩耗相と増殖相の混在によって特徴づけられている慢性、進行性、非炎症性変性疾患、と述べている。

病理学的所見として、先ず関節面の軟骨の機能不全が起り軟骨は次第に消失し、やがて軟骨下骨板の象牙化(ebumation)、骨煉形成、軟骨骨折(亀裂)、骨髄嚢胞、慢性滑液膜炎を含む骨・滑液膜の二次性病変が随伴し、関節腔の狭窄が起こり、X線像として関節間隙の狭窄、軟骨下骨硬化(象牙化)及び返縁骨棘形成が認められる。今回のX線単純撮影による画像診断で興味深く感じたのは骨棘形成の病態と病理である。

椎体や関節突起からの骨棟が脊髄実質、前根、横突起内椎骨動脈を圧迫し、脊柱管内に突出すればその結果夫々特有な神経学的症状が起こる。骨械形成の機序として、例えば股関節症における骨棘形成は、二重像形成骨棘及び辺縁部骨棘何れのタイプも病像の進行に伴い前者は骨髄腔から軟骨下骨髄腔、更に軟骨内への血管の貫通、軟骨新生そして新生骨形成、後者は滑膜からの血管増生、既存軟骨表面線維症、新生軟骨、骨化の機序により形成される。

変形性腰椎症の基因の一つとして椎間板の退行変性があり、年齢的に骨変化に先行すると考えられる。脊椎は体幹の支持組織で椎間板は脊権の支持組織である。20歳を過ぎるとその可動部分である椎間板の変性が始まり、加齢と共に進行する。特に腰椎においては、荷重等によるストレスが多く加わるため椎間板の変性、即ち髄核の断片化、線維輪の断続が生じ、ストレスの加重により変性組織が亀裂部に押し出され椎間板が局所的に膨隆することで椎間板ヘルニアが出現する。髄核のヘルニア、椎間関節の肥厚により圧迫・欝血・浮腫が起こり、好発部位の第4-5腰椎間、第5腰椎一仙椎間では馬尾神経障害として疹痛、脱力、歩行困難、跛行が起こる。予知医学を念頭に置いた場合、非骨組織の椎間板・関節軟骨における超初期病変が観察できる画像診断装置の適応が重要となるが、連携先の第二次診療機関のMRI装備は必須の条件となる。

 

 

 

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