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ロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールのいずれも群間に差を認めなかった(表2)。
III.アポEε4保有の有無と血中α2M値
従来の報告どおりα2M値は男女とも加齢とともに増加した(表3)。有意ではないが男性より女性で高い傾向にあった。しかし60歳未満および60歳以上のいずれの群にてもε4保有群とε4非保有群とでは血清α2M値に差はなかった。α2M値が高値(333mg/dl)を示した1例は慢性肝炎であった。
lV.アポEε4保有の有無と血中PAl-1値
血漿PAI-I値の全体での平均値は20.9±9.3mg/ml(7.8-48.0mg/ml)であった。男性では24.4±7.9mg/ml、女性では19.0±9.5mg/mlで、α2Mとは逆に男性の方が女性より有意に高かった(f検定;p=0.020)。しかしPAI-1値は年齢、アポE表現型とは相関しなかった(表4)。PAI-1値が平均+2SD以上を示した2名(43.2mg/mlと48mg/ml)は慢性関節リウマチ(58歳)と高血圧の女性(61歳)であった。
考察
日本人のε4遺伝子頻度は報告により幅があり0.06-0.11程度である。今回得られた住民全体のε4遺伝子頻度(0.11)はこの範囲に入る。
今回の調査で最も興味深い結果はε4遺伝子頻度が男女とも60歳代で約0.06と最も低く、80歳以上の高齢健常者では0.167と高かった点である。ε4は虚血性心疾患やADの危険因子であり欧米白人では一般住民中のε4遺伝子頻度は70歳以降次第に減少してゆくことが報告されている。Sobelらのフィンランド人の調査ではε4遺伝子頻度は20-55歳の0.227に対して100歳高齢者179人では0.084に減少していた。日本ではAsadaらによる山梨全県の100歳高齢者の調査があり、ε4遺伝子頻度は0.046と低い値が報告されている。
しかし80歳から100歳までの間ではε4遺伝子頻度がどのように推移するのか厳密にはわかっていない。Poirierらによるカナダ人の調査では今回の結果に類似した60歳代で最も低い二峰性の分布が示されている。またEndohらによる350人の痴呆のない高齢癩患者の調査では、ε4遺伝子頻度は60歳代で0.141、70歳代で0.244、80歳代で0.283と高齢になるに従ってε4遺伝子頻度が有意に増加していた。我々の結果で60歳代でε4遺伝子頻度が最も低くなった理由は様々考えられる。まず第一にはサンプル数が少なく見かけ上、二峰性に見える可能性があげられる。第二には60歳代でε4保有者は心疾患やADに罹患し、健常者から除外されるが、危険年齢を過ぎてしまうとε4遺伝子頻度は保たれる可能性である。ε4遺伝子頻度は加齢とともに単純に低下してゆくのか、あるいはある環境下では二峰性の分布をとるのかさらに調査が必要と考える。
ε4は血清総コレステロールとLDLコレステロールを上昇させるとされているが、今回の結果ではε4保有の有無と血清コレステロールとには相関がなかった。Kawanoらは比較的都市部である埼玉県大宮市の一般住民の血清コレステロール値とアポE表現型との関係を見ているが、やはり両者は相関せず、日本人では血清コレステロール値が全般に低いため欧米白人に比してアポE表現型との相関が明確に出ないとしている。また今回調査した群馬県山間部住民の血清コレステロール値はKawanoらの値と有意差はなく地域差は認められなかった。ε4保有の高齢健常者の比率が高い地域での環境要因はADの発症予防につながる可能性があり、
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