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(50vial)となってしまう。ところが、成人の肺サーファクタントブールサイズは約15mg・kg-1で、50kgの成人では約750mgである。本症例が投与を受けたS-TA量は約7.7mg・kg-1で成人の肺サーファクタントブールサイズの約1/2に相当する。上田らや、野坂らの報告では1回投与量として240mg(約5mg・kg-1)で急性効果を認めている。本症例では野坂らと同様に、分泌物を気管支鏡でできるだけ吸引除去した直後に、肺病変近くに限局して気管支鏡で分割注入しており、比較的少ない量でもARDSの進行を抑えたものと思われる。

さらに、S-TA補充により、FlO2を比較的早期に酸素毒性領域以下(FlO2<0.6)に維持できたことは特記すべきである。胃内容物の気道内誤嚥によるARDSに対してのS-TA補充療法の効果に関しては一定の見解をみていない。元塚らは塩酸の気道内注入による実験モデルを用いて、気管支肺洗浄+S-TA投与群とS-TA単独投与群と比較し、前者がより効果的であったと報告している。本症例では、気管支鏡を用いて分泌物を除去直後にS-TAを投与しており、肺サーファクタント阻害物質の除去に多少効果があったと思われる。また、誤嚥した胃液は多量の水で希釈さ

 

 

 

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