成人丁細胞白血病(ATL)リンパ腫型の一例
北海道・旭川医科大第3内科 大西浩平・西野徳之
北海道・市立札幌病院外科 青木貴徳
要旨
利尻島国保中央病院がある利尻島は北海道最北端稚内市の西方58kmに位置する、人口1万人弱、漁業と観光の島である。当院は1980年より自治医科大学の卒業生医師3名により、2年交替で継統的に診療が統けられている。
今回、我々は69歳(男性)で発症した、ATLリンパ腫型の1症例を経験した。患者は当院にて、直径30mm大の腹部リンパ節腫張を超音波検査にて指摘され、その後、2ヶ月半で急速に病態が進展悪化し死亡した。患者は輸血歴はなく、同胞にHTLV-Iキャリアが数名いることより、垂直感染が最も疑われた。また、最終診断は、リンパ節組織からHTLV-IプロウイルスDNAのモノクローナルバンドを証明し得られた。
我々が調べた範囲では、過去15年間の島内の悪性疾患のうちATLとして確認されたのは本症例が初めてである。本症例は島内における緊急輸血体制やウイルス拡散防止策を検討し改善をするきっかけとなった重要な1例のため若千の文献的考察を加えて報告した。
I.はじめに
利尻島国保中央病院がある利尻島は北海道最北端稚内市の西方58kmに位置する、人口1万人弱、漁業と観光の島である(図1)。利尻島国保中央病院は1980年より自治医科大学の卒業生医師3名(内科医2名、外科医1名)により、2年交替で継続的に診療が続けられている。
利尻島内には当院の他に無床診療所と道立病院の2カ所があるが重症患者および悪性疾患の診断および治療後のfollowupのほとんどすべてを当院にて行っている。今回腹部超音波検査にて腹部リンパ節腫脹を指摘し、これを契機に成人丁細胞白血病(adultT-cellleukemia:ATL)と診断し、その後急速に病態が進展悪化し死亡した症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
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