EMSの留置手技は容易で重篤な合併症の報告は少なく、本邦でも1987年に初めて胆道系に留置されて以来急速に発展普及してきている。悪性腫瘍に対するEMSを用いた治療が適切と考えられた場合、併用療法による抗腫瘍療法が必要かつ可能であれば高次医療機関への適切な紹介が必要となろう。しかし、palliative therapyが目的であれば、体力的、時間的、経済的にできる限り負担の少ない方法、すなわち中核病院で施行されることが望ましい。このために、中核病院でもより多くの技術を医師が体得し、先進的医療を積極的に取り入れていくことが必要となる。
地域医療の場で先進的医療を推し進めるためには、
1)医師が十分な研修を積みトラブルに対処する方法を身に付ける。
2)多くの経験を持つ後方支援病院と連絡を密にとり、いつでも相談可能な状態を維持する。
3)十分なインフォームドコンセントを得る。
という以上の3点を掲げたい。
palliative therapyは今後地域医療の現場において最もその治療手枝の向上、分野の拡大が望まれるところである。この際、新しい、有用なデバイスを用いた治療を積極的に取り入れていこうとする態度も必要となってくる。特別な設備を要さず、共通の手技で多臓器への応用が可能なEMSの活用は、今後地域医療の現場でも活発になってくるものと思われた。
まとめ
離島中核病院において、EMSを用いたpalliative therapyを肝癌の下大静脈狭窄による腹水、下腿浮腫例および食道癌による嚥下困難例に用い、いずれも良好な結果を得た。重篤な合併症は認められず、QOLの向上に寄与した。地域医療の現場でも、EMSを用いた治療は、今後積極的に試みられるべきと思われた。
文献
1)齋藤博哉、他。悪性腫瘍による下大静脈閉塞に対するExpandable metallic stentの臨床応用。臨放線391235-241.1994
2)青木貴徳、他。悪性食道気管支痩に対するGore-Tex Rcovered expandable metaHicstentによる治療。Gastroenterol Endosc371827-832.1995
3)SchaerJ,et al.Treatment of malignant esophageal obstruction with silicon-coated metallic self expanding stents.Gastrointest Endosc3817-11.1992
4)前田宗宏、他。消化管のステント。画像診断13:309-314.1993
5)久保田靖、他。本邦におけるMetallicStentの現況。IVR101354-357.1995
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