II.症例
患者:69歳、男性。
主訴:腹部腫瘤精査目的。
家族歴:悪性疾患および神経疾患なし。
既往歴:特記事項なし。
輸血歴:なし。
供血歴:48歳時に妻へ供血。(食道静脈瘤破裂による出血性ショックのため。)
海外渡航歴:なし。
針治療歴:69歳時に島内で針治療を受けた。
居住歴:利尻島出身。49歳より5年間冬期間は大阪へと出稼ぎにでていた。この時に九州の人たちと一緒に働いていた。
現病歴:当科へは高血圧症、糖尿病にて通院中であり、1994年10月4日に施行したスクリーニング腹部超音波検査にて膵背部に直径30mm大のlow echoic massを認めたため、10月20日に精査目的のため当科へ入院した。
入院時現症:身長162cm、体重65kg、血圧122/60mmHg、脈拍66/mm、眼球結膜;貧血や黄疸なし。胸部;心音、呼吸音ともに異常なし。腹部;平坦、軟、腫瘤は触知されない。四肢;浮腫なし。頚部及び腋窩リンパ節;触知せず。両鼠径部リンパ節;直径2〜3cm大、弾性硬、圧痛のあるリンパ節を数個触知する。(55歳時よりリンパ節腫脹が認められたが著変ないため放置していた。)皮膚;異常なし。
一般検査成績(表1):白血球数6800/mm3(Ne79.5%、Ly10.5%、Mo7.9%、Eo1.8%、Ba0.3%)、抗HTLV-I抗体陽性、抗HIV抗体陰性であり、LDHは968IU/lと高値を示した。
家系図(図2):同胞および配偶者は抗HTLV.I抗体陽性である。子供はすべて陰性である。
入院後臨床経過(図3)1入院時は膵癌を疑い、腹部CT(図4)、ERP(内視鏡的逆行性膵管造影)、EUS(超音波内視鏡検査)(図5)等を施行した。その結果、膵周囲のリンパ節が腫脹していると考えられ、癌の転移または悪性リンパ腫を鑑別診断するために検査を進めた。LDH値の経過は1994年4月までは、408IU/lと軽度上昇していた机1994年9月より683IU/lと急激に上昇しはじめ、入院時には968IU/lと高値となり最高1443IU/lまで上昇した。鼠径部のリンパ節はは55歳頃より腫脹し、特に大きさに変化は