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既に本邦でもその有用性が報告されている。これらの報告例の数例の治療に筆者らは実際にかかわることができた。本症例の全身状態は決して良好ではなく、留置後3週間で死亡している。しかし、留置前の腹水と下腿の浮腫で悩まされた状態から脱却し、症状の再発も認めず、安らかな最期を迎えることができた。留置後はEMSのmigrationを生じることもなく、留置前後を通じて合併症は認めなかった。留置手技は容易であり、手技に要する時間も短く、低侵襲で施行可能であった。患者の状態から結果的に留置日数が短期間に終わったが、QOLの向上に果たす役割は大きかったと思われる。

また、食道EMSに関しては、既に筆老らはGore-TexでカバーしたEMSを用いて悪性食道気管支痩の治療を行い、その良好な成績を報告してきた。Schaerらも食道癌による狭窄に対し、シリコンでカバーしたEMSを用い狭窄解除に極めて良好な結果を得ている。EMSをカバーせずに留置したのでは、癌がステントワイヤーの間隙から増殖し再び狭窄が起こってしまう。Gore-Texを用いたcoveredEMSは容易に作成可能であり、先に述べた方法で食道内留置には経験があったこと、また、従来の食道ブジー挿管では挿入時の患者の苦痛は大きく、合併症は致死的であるなどの理由からcoveredEMSによる食道拡張を選択した。

食の欲求を満たすことができ、経口摂取可能な期間も比較的長期であったことからQOL向上に大きく貢献したものと考えられる。

 

 

 

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