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「日本一長い村」の医療活動−現場医師の立場から−

鹿児島県・鹿児島赤十字病院内科
後藤孝史・松下尚憲・神野公宏・黒木茂・鳥越俊行・吉玉珠美
泉原智麿・松田剛正・新村健

要旨

行政区としては日本一長く広がった鹿児島県の十島村における医療活動を総括した。僻地診療所における診療では、日程の編成、村営船の予定変更、年齢構成などによる疾患の疫学的特徴、中年男性の受診率、検査機器の不足による検体の移送、難病対策、薬剤の常備などについての問題点を指摘した。

ヘリコプターによる救急搬送では、その疾患別内訳、搬送における症例選択の困難さ、搬送前処置の重要性などを述べた。また、特に脳血管障害例を集計し、脳梗塞では夏期のヘマトクリットの上昇が、脳出血ではストレス性の要因も発症に影響する可能性を述べた。更に、リスクファクターの厳密な管理の重要性が再認識させられたことを強調した。

校医として活動する時の注意点、予防接種、妊婦検診の実態を纏めたが、特に切迫性流産はヘリコプターの救急搬送においても数が多く、若者の定着という点でも離島医療における今後の重要な問題であろう。

はじめに

鹿児島県の十島村は、屋久島の南方に南北160kmにわたって点在する大小様々の島々から構成された日本」長い村である。人口は男性369人、女性366人、計735人(平成7年6月)で、最も大きな中之島でも188人、小さな小宝島は僅か42人である。土木関係の業者、秘境を求める若者や太公望の他は、通常は訪れる人はあまり多くはない。

しかしながら、豊富な海の幸や活火山を擁する幽玄な風景は、訪れる度にいつも違った楽しみを与えてくれる。島には常駐する医師がいない。そのため医療活動は各島の診療所に配属された1名ずつの看護婦が中心となり、島民の生活に密着した形で行っている。また、これを鹿児島市にある村役場から巡回する保健婦や栄養士が補佐している。我々の鹿児島赤十字病院は、昭和56年にこの地域の僻地中核病院に指定され、屋久島の北側に位置する三島村とともに、僻地診療所における医療活動、重症者の救急搬送、種々の検診、予防接種、受診者の投薬指示に携わってきた。
今回は十島村における医療活動について紹介する。

僻地診療所における医療活動

(1)診療の概要

十島村では、計7島を月1回の割合で巡回している。村営船の十島丸(1090t、定員248名)は、鹿児島に最も近い口之島まで約6時間、逆に最も遠い宝島まで約15時間を要する。船中泊となるため、十島村のみでも病院からの出張日数(平成7年6月)は、1ヵ月に延べ26日となり、誰か一人の医師がいつも

 

 

 

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