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たが、常時付いている必要もなく、娘の負担はさほどなかった。ただし、体幹の拘縮をきたしたあたりからは、もっと日常的な介護の体制が必要であった。
2.夫は娘任せで(自身も常時呼吸不全状態だったこともあり)、妻に対しては介護上の事で怒ったりすることもあった。
3.不定期の訪問リハでは不十分で、定期的な訪問リハと、更に日常的に訓練をする介護者が必要であった。

C.福祉

1.ADLがダウンしてからは、入浴サービスも週2回は必要であった。
2.日中はテレビが相手か、夫との会話ぐらいだったので、デイサービスヘ参加が望ましかった。
3.ヘルパーの訪問が週一回行われていたが、内容的には入浴サービスだけであり、ADLの維持や話相手になるなどの面からも週2回は訪問が必要であった。

考察

A.医療について

最近の在宅医療の特徴として、かつては病院医療でしか行えなかった酸素療法や、中心静脈栄養、インスリン自己注射、自己腹膜還流等の高度な医療技術が、在宅でも行われるようになってきたことがあげられる。しかし、これらの高度な医療技術を、日常の在宅医療の現場に持ち込めるためには、連携のうまくいく中核病院が近くになくてはならない。当診療所の場合、はっきりした連携病院もなく、在宅でできる医療水準は非常に限られたものになっている。
症例1は、近くに連携病院があれば、在宅酸素療法の適応であったし、症例3についても、肺炎による呼吸不全状態時には、在宅酸素療法が必要と思われた。当診療所にはガス分析装置もなく、今後在宅酸素療法を行うとなると施設整備も必要である。
また中心静脈栄養についても、症例3と5に関しては充分にその適応と考えられたが、近くに24時間対応できる連携病院がない状況では、末梢静脈管理とせざるを得なかった。

在宅医療は、大きく3つに分類されるが、
?@在宅高齢者に対する介護、看護が主体となるもの
?A在宅末期がん患者に対するもの
?B腎不全、呼吸不全、糖尿病などの疾患を持った患者に対する在宅での比較的高度の医療を行うもの

現在の当診療所の力量では、上記のうち?@だけが対象で、?A?Bについては今後の課題である。?Bについては、この間対象となる患者が発生しなかったが(把握していないだけかもしれないが)、?Aについては3名の末期癌患者の往診を行っている。いずれも状態の悪化とともに、最初に診断加療された病院に再入院し、その病院で死亡されている。これらの場合も、最後まで在宅で看取るとすれば、肺癌の患者は在宅酸素療法が必要であったし、腎癌の患者では、腹水のコントロールと癌性疾痛の対策が必要となっていた。また胃癌末期の患者も、低栄養状態となり、在宅医療を続けるのであれば中心静栄養を考慮しなければならなくなっていた。

次に入院のタイミングについてみると、症例1,2,4については、その時期を逸してしまったと考えられる。症例1は、右心不全、低蛋白血症の出現時に、在宅酸素療法の適応も含め入院精査を勧めるべきであった。症例2は、消化管出血と判断した時点で即入院とすべきであったのに、明朝にしたいという患者と妻の要望に負けて一夜置いたのが致命的な結果を招いた。また症例4については、膝関節の屈曲拘縮が始まった時点で、ROM-Eを中心とした入院リハをするように、患者家族を説得できなかったことが悔やまれる。
これらの入院医療との関連でも、近くに二次医療の可能な連携病院がないということが、当診療所の在宅ケアにとって大きな制約となっている。町内で家族も気軽に行き来できる病院があれば、検査入院でも緊急入院でも、短期間の条件で円滑に行われたに違いない。現在の島の医療面は、技術及び病診連携いずれの面でもかなり限界をもったものといわねばならない。今後、独自に自己管理能力を高めていくのか、あるいは隣町にある100床規模の民間病院(船と陸路で40〜50分)との連携を強めていくべきか検討課題である。

B.介護

6例の介護者をみると、男性では妻が2名(70代と80代)娘1名(60代)、女性では嫁2名(ともに60

 

 

 

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