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い私も何とか患者さんの気持ちをつかめているんだなと、感謝しています。“ドアノブコメント”というのもあります。本来は、患者さんがドアを閉めるときに言う言葉に、大切な情報が含まれているという意味らしいですが、私はドアを閉める音に患者さんの心情が込められていると思っています」
---ガタンと閉めると不満とか?
「そう。それを、いかに聞きわけるかですね」
---診察は一人に、どれくらいかけられますか。
「平均5分ぐらい。でも、必要なときは30分でもかけられますよ。午前の4時間で平均25人ぐらいの外来患者ですから。また診療所へ来る多くの老人患者さんはバスで送迎しますから、診察が早く終っても、ほかの人が終わってバスが出ないと帰れない。あせっても、しようがないんです(笑い)」
---村の診療所って、いいですね。村あげて健康を守っていて。
「(うなずき)月1回、高齢者サービス調整会議というのがあるのですが、県内でも三瀬村は非常にうまくいっているケースだと思います。役場の福祉係、デイサービス、ホームヘルパー、ケースワーカー、訪間看護婦、保健婦、社会福祉協議会、それに私と看護婦。みんな出席しても10人に満たない会議ですが、全貝が現場で働いているので情報交換が密にできる。在宅介護の必要な人ごとにカレンダーをつくって、きょうはデイサービス、あすはヘルパー、次は往診とか、取り決めるんです。せっかく、このようないい仲間がいるので、近々、診療所の建て替えのときには、 保健・医療・福祉を統合したような施設とシステムができないかと、願っているところです」
---ところで、私を含めて大病院“思考”が強いと思います。志向ではなく思考が。
「わかります。行動以前の、考え方自体が大病院に向かっているというのでしょう。医者の側にもありますよ。専門医思考とか大病院思考が。何か、そっちが偉いというような」
---大病院と小さい病院とは役割が違うと、頭ではわかっています。でも実際は、この症状では、どこの病院に行ったらいいか、どこの科で診察を受ければいいか、素人にはわからないことが多いし、そんなとき、だれに聞いていいかもわかりません。
「そういうときこそ、小さい病院というか、いわゆる“かかりつけ医”を利用してほしいです。自分の病歴だけでなく性格まで知っていて、気軽に相談できるような、かかりつけ医を、ふだんからつくっておいてほしい」
---かかりつけの先生に気がねして、「紹介状を書いてください」と言えないこともあるのですが。
「気がねしなくていいようになるのが、本当の信頼関係なのでしょう。ある先生の言葉ですが、名医の条件は、?@患者の問題がわかり?Aその問題が自分で解決できるか人に頼んだ方が良いかが判断でき?Bだれに頼めばいいか知っていて頼むことができることだそうです。現代の名医は、一人で何でもできる人ではなくて、どれだけのネットワークを持っているかなのですね。私も月に10通は紹介状を書いています」薬のことですが、先日も薬の副作用が

 

 

 

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