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「信頼できる“かかりつけ医”をふだんからつくっておいて」



---白浜先生のことは、医大の医師から三瀬の診療所長になられたということで、その活動に関心をもっていました。さまざまな医療の問題点が指摘されている時ですから、患者の立場から、お話をうかがいたいと思います。もともと三瀬診療所と医大には、かかわりがあったのですか。
「佐賀医大から医師が行くようになって3年になります。佐賀医大には専門各科のほかに“総合外来”がありますが、こういう形は国立の医大では初の試みでした。“地域の中で患者の全体がみられる医師をつくろう”ということが、佐賀医大開設の一つの理念であり、そのような医師を育てる部門として総合診療部ができ、私自身、その中で育てられ、後輩の指導にも当たっていました。三瀬診療所での医療活動は、その理念を地域で具体的に実践するという、これまでの働きの延長線上にあります」
---大学病院と比べて、いかがですか。
「大学病院に来られる患者さんは少し“よそゆき顔”をしていますよね。村の診療所では普段の顔。これがいいです」
---三瀬村の人口は〜
「1,800人。この数字が、またいい。1年いると大体、全部が見えてきます。住民の一人として運動会などの行事に参加し、元気な人に接することができるのもいいですね。大学病院では、患者さんの生活環境は患者さんの言葉を通してしか分からなかったのですから」
---往診もされますか。
「はい。毎日午後に2,3件でしょうか。往診に行くと、患者さんの部屋の採光や温度、看護の手はあるか、どんな食事をしているかなど、いろんなことがわかります。独居老人でも、必ずしも孤独とは限りません。大雪の日に具合の悪くなった患者さんを、隣のご主人が連れてきてくれたりするんです」
---村ならではですね。
「逆に、全部わかってしまう怖さもありますが」
---というと〜
「診察室の会話が別の患者さんにも聞こえたり、『○○さんな危なかてよ』というようなうわさが、たちまち広まったり。佐賀医大から診療所実習で来ている学生が、リポートに書いていたんです。『プライバシーへの配慮が足りない』と。診察所の構造と、私の声が高いせいもありますが(笑い)」

“ドアノブコメント”をいかに聞きわけるか、ですね

看護婦さんの役割も大きいのでは〜
「(うなずき)診療所のスタッフは、事務長、歯科医師、ナース、受付、事務、私の10人ですが、私以外は長年、ここで働いてきた人たちです。ある日、窓口の人が渡してくれたメモに、『この患者さんは神経質だから、強く言わないでください』と書いてあった。患者さんの背景を熟知したスタッフの、このようなサポートがあるからこそ、ここでの経験の浅

 

 

 

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