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6 地元紙・中央紙等の記事より

チームワークと決断が命救った

急患!!離島での治療万策尽き



「まちのドクター奮戦記」筆者で、宗谷管内利尻島国保中央病院の西野徳之院長は救急医療にも携わっている。救急医療は迅速な判断力、行動力、いろいろな立場の人のチームワークが要求されるが、離島の場合、都市から離れたハンディも加わる。昨年8月に利尻島であったそうしたケースを特別編として詳しく書いてもらった。

去年のちょうど今ごろ、早朝に1台の救急車が利尻島国保中央病院へ搬入されました。
「けいれんをおこしたのですが、今は治まっています」眠い目をこすって患者さん(60歳代、女性)を診察すると、どうみても普通ではありません。体はびしょぬれで、よくみると血色不良です。肺の音は?窒息!に近い音です。家族の話をうかがうと、多量の水をおう吐してそれを誤って肺に吸い込んでしまったようなのです。けいれんは、窒息状態で暴れたためのようです。
すぐに気道を確保するために管を入れます。すると肺の中からは多量の水が出てきました。それでも呼吸はよくなりません。人工呼吸器を装置、高濃度の酸素を吸ってもらいます。肺からはおぽれたときのような赤い泡状の吐物が出てきます。半日たっても状態はいっこうによくなりません。かといって今の状態は搬送できる状態でもありません。今のままでは一週間ともたないでしょう。なんとか改善させる余地はないものでしょうか?

札幌医大に相談電話

札幌医大救急治療部の先生と電話で相談してみました。「未熟児の肺炎で使う特効薬があるのだけれど、保険の制約から大人では使えません。もし使ったとしても効果は半々、さらに費用は何百万円とかかってしまいます」
この薬を使うと患者さんを助けることができるかもしれない。しかし、どのように入手したらよいか、そして保険で使えない薬の費用(自己負担)をだれが負担するのか。問題はたくさんあります。
まず製薬会社に連絡をしてみます。なんとか薬を提供してもらえるように交渉をするのです。札幌に電話すると、あっさりと断わられました。それももっともです。どこの馬の骨ともわからない病院から電話一本で高価な薬を提供してほしいと言われてもすぐに「はい」とは言えません。でもこちらも一人の命がかかっているのです。あっさり引き下がるわけにはゆきません。延々1時間の電話でなんとか東京本社と掛け合ってもらえることになりました。

 

 

 

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