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僻地医療実践の記録−医師も在宅へ

千葉県・鴨川市立国保病院内
鴨川市ふれあい訪問看護ステーション管理者

田代ひろ子

千葉県の南、ここ房州において鴨川市は人11約3万、高齢化率23.3%という超高齢化の真っ直中にある。その鴨川の面する外房の海より約10km入ったところ、北は君津山系、南は嶺岡山系に挟まれた長狭平野のほぼ中央に、おらが村の病院である鴨川市立国保病院がある。
その中に、今年6月「鴨川市ふれあい訪間看護ステーション」が開設された。鴨川市立国保病院の在宅医療の歴史は古く、世の中が今こそ在宅に目を向けての支援とばかりに力を入れているが、それ以前十数年前から地道に取り組んでいた。いや、そうならざるを得ない理由がここ過疎と呼ばれるこの長狭街道沿いにはあったのだ。まだ街道を走るバス停に近い人は恵まれている。そのバス停に出てくるまでに30分、50分、1時間入った所に、肩を寄せあって生活している小さな集落が点在している。その中の1つに大山地区と言う所があり、来年の小学校への入学予定者はなんと4名だけという地区である。その様な高齢者だけが取り残された様な地域に住み、現在ステーションを利用されている人は5名いる。全員が病院へ来院する事が困難な人達である。にもかかわらず、在宅医療に理解の少ない医師は「外来に来い」と、言う。地元で生まれ育ち、この町と共に生きている私には、とても悲しい現象として写る。
Hさん76歳、38歳の時倒れて以来不自由な体で杖をつき、肩からカバンを下げ、外来に通っていた。しかし、2ヶ月位前から腰に力がなくなり、立ち上がることが大変になり、往診の依頼があった。「この間、外来に来ていたではないか、連れてきなさい」と医師の言葉。私達、ステーションに支援センターを通し依頼があり、行ってみると尿臭が強く時々の尿失禁もあると言う口外の重いHさんの入浴に困っていたのであった。よくよく話を聞いてみると、外来へ行ったのは歯科受診のためであり、福祉サービス(移送サービス)の“ゆうあい号”の運転手がたまたま親戚であったことから事情を知り、手をさしのべてもらったとの話であった。それも、段差のある玄関は、運転手が抱えて移動し、とても大変だったと話す。
この体の不自由な夫と運転の出来ない妻の夫婦2人だけの生活。そんな中で往診依頼は、困ってのSOSだったのである。“ゆうあい号”も早くよりの予約が必要であり、現在、混んでいるのが現状である。こんな時、なぜやさしく往診してあげられないのか医療的要素がうすい。そんなケースはステーションの対象とはならないのではないか? との声が聞かれることもある。だが医療的要素のみで

 

 

 

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