
療について知らない人が多いのにびっくりした。地域住民のために町が開設した国保の診療所なのに、これではその役割を果たしていないことになる。そのいい例として、健診の胃透視でひっかかった人が、診療所に電子スコープがあるのを知らずに、診療所よりも遠い病院で内視鏡の検査を受けたという話を聞いた。そこで、診療所の広報と医療の話題や雑件などを盛り込んだ「診療所だより」というものを発行することにした。これは平成8年の5月から2ヶ月に1回(奇数月)に発行していて、自分と看護婦2人で原稿を考え、B4の表裏に印刷して診療所と回覧を中心に配布しており、概ね好評を得ている。このような小さなことでも診療所と住民との接点があると、こちらの考えが伝わるし、住民からの要望も入りやすくなるのではないだろうか。
診療所と行政との協力
僕が勤務する以前よりこの愛治地区(愛治診療所の診療圏)では、町の保健婦やヘルパーなどの職員が積極的に加わって、健診、健康会議、地域巡回、予防活動、介護などに力を入れている。診療所はその性質上、症状がでたり家族が要望したりして、診療所に来たり連絡したりしないかぎり患者を診療することができないので、症状が出ない(あるいは早期)疾患の患者や出ても我慢する患者、診療所に行けない患者や家族が連れてこない患者は孤立することになる。 町の職員の活動は、それを少しでも解消するために大いに役立ってるが、診療所とのつながりがないと(あるいは少ないと)せっかくの活動が無駄になりかねない。今までもつながりはあったのだが不十分であったため、1〜2ヶ月に1回まず保健婦とミーティングを行うことにした。診療所からは、ねたきり老人など定期往診している患者や問題のある患者などの状況を話し、保健婦からは地域で気になることや診療したほうがよい人などを話して検討している。ミーティング以外でも急を要する場合は直接保健婦が診療所に連絡している。 また、健診結果のコピーが診療所にくるので大いに利用しているし、保健婦が巡回中に測定した血圧の記録も参考にしている。また、前項でも述べたが、地域の健康会議になるべく参加して住民に講話をしたり、住民の疑問や要望などを聞いたりしている。地域住民と診療所と行政とのつながりがもっと活発になり、またそういった体制やシステムがもっと整えば、広見町国保愛治診療所としての役割も大きくなるのではないだろうか。自分自身が力不足で能力不足だし、1人の医師がずっと勤務することはないので難しいが、できるところから改善していきたいと思う。
(自治医大第16期生広見町国保愛治診療所〒798-13愛媛県北宇和郡広見町清水970)
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