僻地での医療活動の改善点
愛媛県・広見町国保愛治診療所(広見町国保小倉診療所兼務)
大藤久志
診療所にきて1年半
平成7年の6月に愛治診療所にきて早くも1年6ヶ月が過ぎた(第16編を参照して下さい)。最初は内科診療が不慣れな状態であったが、半年ほどたった年末ぐらいになると、定期的に来院する患者の顔と名前が一致するようになり、診療もスムーズに行えるようになった。看護婦の1人が地元出身で20数年ずっとこの診療所に勤務しているため、患者の治療のことや既往歴、家族歴、家族関係のことまで知っており、診療の上で力になり非常に心強かった(最初は頼りきりだったと言っても過言ではなく、今も力になってもらっている)。患者も物療を中心に増え、何より「おかげでよくなりました。」という声を聞くととてもうれしく感じる。僕も僕の妻も自然に囲まれてゆったりと生活するのが好きだし、2歳と1歳の子供を育てるにはとてもよい環境なので、僻地での勤務に不満は感じていない。ただ、やはり改善した点やこれから改善すべき点はいくつかあった。(経験が浅い若僧が言うのも恐縮ですが、浅いなりに考えてみました。)
診療上の困難
診療所に来る患者は内科はもちろんのこと、小児科、小外科、整形外科、皮膚科、婦人科、耳鼻咽喉科など多科にわたる疾患を
もっている。そのため、それらの疾患をきちんと診断し、治療できる能力が問われる。また、診療所で治療できないと判断したなら、専門医にその状態が分かるように紹介したり、救急の場合は診療所でできる処置をして移送するということも必要となる。しかし、専門性が増した現在の医療形態では、そういう能力を育てる体制や指導者がほとんどない状態であり、実際自分もその能力不足を感じている。いろいろな科を回り、最新の知識やテクニックを学び、専門医に負けないくらいの能士をもつのが理想であるが、実際不可能である。専門的なことは大まかな知識としてもっておき、診療所で生かせる知識やテクニックを身につけるのがよいと思うし、それを身につけるのさえ大変なことだと思う。そういった総合的な能力を身につけられる体制や指導者が整えば、第1次医療機関の医療の質が上がるのではないだろうか。
診療所と住民との隔たり
他院から紹介されたり自分の都合(遠いなど)で他院から診療所に変えたりする患者の中に、「診療所はこんなこともできるんですか…」と驚かれる方がいた。また、各地区で行っている健康会議の中でも、「診療所では何ができるんですか?」とか、「どういう病気が治せるんですか?」と、診療所でできる検査や治