
パスでもないが、かなりのゆとりがあった様ですが、長野に来て3年、検査が多いと「検査理由を聞かせて下さい」と返戻されることがよくある。明らかに大阪とは大違いだと感じた。
最近までは、大阪では点滴は殆どフリーパスでしたのに、厚生省の通達で全国的に点滴の中身まで、特に点滴中のビタミン剤の投与理由を求められる様になった。関西では開業すると勿論のこと、管理医師として病院勤務しても、1年位には必ず個別指導で呼ばれることがあるが、平均点数が高いと注意されるが、高くなければ、問題はない。高くて注意されても改善がないと2回目、3回目の個別指導となり、最終的には「君と医学的な論争をしているのではなく、君が保険医として働くか、働かないかだ」と来た。「保険医として働くならば国の保険指導方針通りに従がって欲しい」、続いて「どうしても自分の考えを通そうとして指導に従わないと言うならば、保険医を辞めて自費診療でもやりなさい」最早議論の余地がない、おとなしく従う他には道がないと諦めて従うことにした。それから自己反省と自己改造を何度か繰り返しおこなったためか、ほとんど返戻も減点もなくなったが、長野県に来ると再び減点や返戻が一段ときびしい。
私がいた大阪の病院は大阪でも中堅の医療法人の病院でしたが、血液は勿論のこと、XP,CT等、諸検査が終わった時点で最終判断するので、若い医者でも労なく診断出来る、八坂村に来て見ると診察机と椅子、そして診察台があるだけで、鉄砲持たない兵隊さんと同じである。最近になってから、心電図とレントゲンと骨塩定量と眼底検査が出来る様になった。大人の患者は兎も角、子供の患者は泣くだけで少しも質問には答えてくれない。夜半に起こされて往診、学校の教室に布団を敷いての合宿、10才の女の子が激しい腹痛で問答も出来ず、ただわめき散らす、手は胆嚢部位を押さえているので、救急車を呼んで病院に行かせた。何と腹痛の原因は便秘だったと。
もう一人は、少し大きい子で中学生低学年が来た、同じく腹痛で部位的には胃炎としか診断できないので胃薬を投与して暫く様子を観察したが、改善しないので小児科に行かせたら『起立生調節不全』による腹痛と言う。血球検査の器具もない、田舎の診察室で、全く医師としての自信喪失です。最早頼りとなるのは小児科の医学書だけである。気軽に友人にも聞くことも出来ない。嫌でも小児科の医学書に醤り付く、小児科に興味が湧くと次々小児科が来ても対応できるが、途中から「メンスをずらす薬を下さい」「此処は薬屋ではないからだめ」と言うと「何と言う薬か数えて下さい」と来た。婦人科の処置ではなく、
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