
僻地医療にたずさわって
岩手県・国保衣川診療所 鈴木俊光
地域背景
岩手県南部内陸に位置し、国道4号線に村の入口があり、奥羽山脈に西へ南へと20km程ずつ入り込んでいる中山間地域で、人口5,600人程の過陳の村である。村民の多くは兼業の農林業であり、主たる生計は、多くは現金収入の得られる勤め人であり、農林業だけの専業は20%にも充たない。若者のほとんどが町への勤め人であり、車社会となり一家に二台三台の車を持っている。老人達は特におばあさんは車運転ができず、足がないと表現される如く、日に二往復ないし三往復するバスに頼る以外は村外又は村の中心まで出てくることもまれである。従って、村唯一の当国保診療所は各地区に週3回程の患者輸送バスを運行している。しかし、各家にはほとんど電話はひかれており、その他村の防災無線放送が村内くまなく聞こえるように配置されている。
医療のスタート
10年間休診の続いた診療所で、一人医師三人看護婦体制で長期間可能な方法は何かと考えスタートし、まず外来は予約制を導入した。すなわち、入院患者(18床)をとりながら、外来、往診もするとなると、基本は予約制外来としたのである。各家にはほとんど電話があり、それによる予約を町とした。また、救急は日中は可能な限り受けるとし、夜間は地域の救急体制に依存するとしてスタートした。村民の理解は救急については暗黙の了解を得られているようであったが、予約制については3年間は充分な理解を得ることは難しかった。予約がないと診察は受けられないと誤解された。今では患者自身の待ち時間も少ないことが判ってきたし、自由に受診したい人は待ち時間が多少多くなっても文句を云わないところまで分ってきた。しかし外科は及ばず、小児科、皮膚科、眼科など時々紹介状を渡し、各々の専門医に行くように勧めた。すると“見放された”、または“自分の病気が分からない藪医者”ととらえられたりした。 僻地診療は一人医療となり易いため、その弊害をなくすため、専門医などに受診させることは患者白身にとっても良いはずである。車社会となっている現実から可能である。レントゲン写真については、放射線科医と宅急便を利用し、ダブルチェックを行なっている。血液検査などは全国ネットワークを持つ検査機関に毎日委託し、その結果は翌朝電話回線を使ってパソコンにて報告を受けとり、町での総合病院勤務時と同様の検査が可能となっている。唯一不可能なものは生理検査であるが、検査日を設けて自分でしている。従って、かなりの機器を備え、夕一ミナルケアや慢性疾患の管理もできるようにし、県立病院との
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