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界の観光交流人口のうちわずか1,500〜1,700万というのは、わが国の経済力からすると比率的に非常に少ない。世界のGDPの15〜20%を占めるというわりには非常に少ない。5,000万〜6,000万人ぐらいがそれに相当することになるわけですから、まだまだアウトバウンドも問題があるだろうと。そのうえで、この交流の時代のインバウンドといいましょうか、国際観光というものを考えていかなければならない。先ほど運輸省の方からご発言がございましたが、清水さんがおっしゃったように観光産業は次世代の戦略産業なのです。今国のほうでも、次にどういう産業を基幹産業として育てていくのかということがテーマになっております。先ほどのオーストラリアの事例でもそうですが、今ある産業をどうするかということよりも、まさにこういう次世代の戦略産業のなかで今まである産業なり生活、地域というものをどのように考えていかなければならないかということへ、やはり問題がシフトし始めているのです。
私ども学者というのは、よくいえば予言者、悪くいえば三百代言だと思っておりますから、当たるも八卦、当たらぬも八卦といいますか、当たったためしのない予想見でございますので、あまり信用なさらないほうがいいかもしれません。そのうえで、地域の方々にご提案があります。一つは地域サイドから仕掛けていくということ。そのためには、先ほど黒壁の話や雨森地区の話が出ましたが、グローバル社会の中での地域の、かつて大分県で行われた一村一品に因んでいえば、一村一交流運動というものを展開する。そういう視点をまずつくっていただきたい。
つまり、この地域はこの戦略によって他の世界の地域と交流していくのだと。そのなかで、それぞれの地域の資源、これを上原さんはほかの専門家の目に照らしながら評価していくということをおっしゃいましたが、そういうことも含めて、地域を観光なり交流という視点で捉えた場合にどういう資源があるのかということを考えていく。JNTOの訪日外国人に対する調査で、今度来たいところはどこですかといった場合に、「日本の自然な暮らしが見たい」というのが第4位か5位に挙がっております。これは今でも変わらないと思います。何も厚化粧をする必要はない、地域のそのままの自然な生活、暮らし、産業、生きざまそのものが交流のぺースになるのだというところから始めた場合に、地域をどのように観光商品として見せることができるか。これが非常に重要かと思います。
それを踏まえて、清水さんが先ほどおっしゃったように、歴史街道の井戸さんが日々奮闘なされておりますような競争と協調ということが問題になってまいります。地域資源というのは非常に小さいわけです。その地域の人口、あるいは人的資源、物的資源、歴史文化的資源、それぞれを取り上げると非常に小さいのですが、それを都市なり、あるいはパリなりと比べてどうのこうのする必要はありません。まさに時代は規模の経済から範囲の経済へ、範囲の経済からネットワークの経済へというようにいわれております。ネットワークの経済性というのは非常に高いわけです。自分の地域にあるものを他の地域にあるものとネットワークして、そこに相乗効果を生み出し、新しい商品価値、新しい価値観でそれを商品としてパッケージ化していくという努力も非常に重要かと思います。
これは、まだ時間があればご説明するところですが、それだけに止めさせていただきまして、そのうえで「ウェルカムプラン21」という一つのプログラムを実現していくために、ウェルカム・ビューローという提案もすでに出されているようですが、観光振興をべースとした地域づくり、観光振興こそ地域の今後のサバイバルとして、あるいは基幹産業として重要であり、それにすべての地域の資源を動員していくという仕組みがつくれるならば、その地域ごとの情報交流なり、先ほどいいましたネットワークを有機的に進めていく組織、仮に私に名付けさせていただきましたら、地域観光交流協議会というようなものをつくっていただいて、地域の国際観光戦略の立案を進めていただく。
その場合に、ばらまき的な企画、補助金ではなく、例えば戦略をプログラミングできるような方々、今日並んでいらっしゃるパネラーのような方々を地域に派遣して、いわば押しかけシンクタンク的に、ある地域を選定してパイロットモデル的な観光交流プログラムをつくっていくわけです。もちろん地域の方と合意してつくっていって、それを成功事例として他の地域へ波及させていくというような仕掛け方も有効ではないかと思います。
また、その協議会において必ずやっていただきたいのは、先ほどの共同プロモーションということもそうですが、その事業の効果、成果というものを絶えず情報開示していく、その姿勢というものが問題点を探り出し、そして新しい次の段階へ

 

 

 

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