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み込んだ議論をいただきました。JTB以外のエージェントの方もこちらにいらっしゃっていて、「なるほど、しめしめ」と思っておられる方もいらっしゃるかもしれません。
それはともあれ、今3人の方、井戸さんからは歴史街道のご紹介をふまえた今後の国際観光としての国内での取組みのあり方。上原さんからは地域の民際での国際交流、あるいはそれを観光という位置づけの中で捉えなおしていく方向性、そこでまた生じる課題について。そして最後に清水さんからは、インバウンドを高めるためにはまずアウトバウンドをしっかりしなければならないのではないかということを前提にしながら、制度的な問題、あるいは構造的な問題、それを乗り越える形での新しい商品開発、情報提供のあり方という形でご提案、ご紹介がございました。
今までのご議論を踏まえまして、また1回目ではちょっと言い足りなかったこともあると思います。あるいは、「旅行商品」という言葉を私はもっと積極的に使いたいわけですが、地域にとっての旅行商品、観光商品をどういうふうにつくり、どういうふうに売っていくのか、あるいは誰に売っていくのかという議論が、3人の方の共通した考え方の中にあったかと思います。都市なり大きな観光資源がある場合には、それはそのまま商品になるわけですが、普通の人々が暮らしている地域、それをグローバルな世界交流の時代にどのように位置づけていくかといった冒頭に私が申しあげた課題とも接点をもつかと思いますので、その点とのからめ合いを求めつつご発言がいただければとも思います。順番をもう一度井戸さんにお戻ししてよろしいでしょうか。では、井戸さんからお願いします。
●井戸 言い足りなかったことということですが、まず、観光交流人口を倍増するにあたって絶対にやっていただかなければならないことが一つあります。それは観光予算を増やすことです。多くの国の観光局がテレビでコマーシャルをつくっていらっしゃいますが、日本の観光予算は30億円、一般会計の0.004%です。うち25億ぐらいがJNTO(国際観光振興会)の予算になっています。JNTOには15の事務所がありますので、割ってみると1億から2億の予算でスタツフが数名。これで彼らに100万の観光客を200万にしろというノルマがはたして果たせるのかどうか。そういう意味では運輸省とともに大蔵省に対しても、これを増やしてもらわなければ困るということをいっていきたいと思っています。
それとは別に、実は私どものような団体でも海外に割けるお金というのは限られています。私どもの海外PR予算というのは、1,500万〜1,000万のあいだです。これで何をやるのかというゲームをしているにすぎないわけです。ですから、やはりもっといろいろな団体が限られたお金の中で連携をしていかなければいけないというふうに思います。例えば、近畿でも同様の広域団体組織、広域連携組織というのはいくつかあります。北近畿のほうにも、紀伊半島の南のほうにも、三都物語も、そしてうちもある。この四つを合わせますと、近畿の魅力は何とかなるのです。北近畿とか紀伊半島はグルメ、自然、温泉。おまけに北近畿は雪が降ります。台湾の方は雪が大好きで、東北などはそれで成功しているわけです。それも相手の身になって考えてみると、向こうは雪が見られないわけですから。三都物語は都市観光。われわれは歴史。合わせてやると4倍のことができるはずなのですが、そこがなかなかうまくいかない。ここが大きな問題かと思っております。
それから、私どもは連携組織ではありますけれども、基本的に連携するというのは競争と協調の関係であろうと思います。ですから、順番にルートで回ってもらうということに必ずしもこだわる必要はまったくない。実は、ドイツのロマンチック街道なども日本で成功しているに過ぎない団体でございます。彼らには「同じようなやり方で韓国・台湾はいける」ということは私のほうからアドバイスしているのですけれども、みんながそのように連携し、AからB,C,D,E,Fというふうに動いていくのが好きな国民ばかりだと思ったら大間違いです。ですから、一つのところが好きな国民には、一つのところにいる方法を提示してあげなければいけないのではないかと思います。
例えば、大阪市は「ステイ・イン大阪」ということで、「大阪にステイしなさい。そうすると京都・奈良へは30分で行ける」と。これは大阪の戦略としてやるべきだと思いますし、京都も京都でそういうふうにされればいい。奈良は「本物は奈良にあるんだ」といえばいい。伊勢・志摩は「歴史もリゾートもテーマパークもあるぞ」といえばいい。いずれにせよ、それぞれが前向きに競争していくなかで、連携すべきところは連携していく

 

 

 

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