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国際観光をどういうふうに捉えていくのかという点から、ご発言をいただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
●清水 今日のテーマは「インバウンドのための基盤整備」ということですが、私どもも売上は1兆5,000億ぐらいあるのですが、やはりアウトバウンドがほとんど主流になっています。逆にイソバウンドは、だんだん減ってきています。数字を見ても、アジアの中で日本は孤立しているのではないかということを、非常に感じています。ですから、今回の「ウェルカムプラン21」というのは、大げさにいいますと、21世紀の日本の国家的な課題ではないか、330万人ぐらいの状態ではもう話が進まないのではないかということを非常に感じているので、そのへんの課題と、旅行業で今どうやっているのかという話を簡単にお話ししたいと思います。
今は「大観光時代」といわれるように、非常に盛り上がっています。皆さんのお手元にWTOの資料があると思いますが、この中の2ぺージに数字が載っています。和田部長もおっしゃっていたのですが、面白いグラフがあります。「1994年の観光動向」というものですが、1985年が3億2,800万人の到着数とあります。これからあっという間に5億3,700万人に増えているわけです。これが1994年の状態です。そこで25ぺージを開けていただきたいのですが、これは予測と実績ということで、1994年の段階でどうだったかということをいっております。東アジアの太平洋地域のところをご覧になっていただくと地図が載っています。
予測の成長率は、アジア太平洋地域は6.1%だったのが、実は9.6%実績が伸びている状態になっています。この数字そのものは、棒グラフを見ていただくとわかるのですが、大変なインパクトを実はもっているものなのです。ここをご覧になっていただいたうえで、日本から今出ている人は1,500万人強で、対前年で12.7%増えているのですが、これはたぶん人口的な割合にすると10%強ということになると思います。台湾では、台湾全国民の23%が海外旅行に行っています。香港は、全国民の41%が海外旅行をしている。シンガポールにいたっては71%の人が海外に出ているというわけです。
ですから、日本は「外に出ている人間が結構多い」といいながら、実はそんなに多くないというのがアジアの状況です。おそらくインバウンドを語る前に、アウトバウンドも2,000万人とか2,500万人とかどんどん出ていく必要が交流べースではあるということなのです。では、その反対側で、外国人の受け入れについて、アジアでいちばん多く受け入れているところはどこかと申しますと、香港です。1995年には1,020万人です。第2位がシンガポールで700万人ぐらい。先ほどタイの話がありましたが、だいたい695万人で、これが1,2,3位です。日本は断然少なく、10位の335万人です。香港に1,000万人も来ている人たちがなぜ日本に寄らないのか、なぜ330万人しか来ていないのかというところに、実は大きな問題があるわけです。「ウェルカムプラン21」でもそこは指摘されています。五つぐらい、今日はポイントをお話ししたいと思います。
1番目は、日本産業の高コスト構造です。いわば物価が高く、円高ということです。最近は円が安くなって楽になりましたので、今年度は外国から来るお客様が増えてはいるのですけれども、やはり物価高の問題というのは非常に大きいわけです。
2番目は、査証が非常に厳しいこと。これは根本的な制度の問題として厳しすぎるのです。とくにアジアのなかで簡単に来られるというのは、シンガポールとブルネイぐらいでしようか。あとは非常に大変です。これはいろいろな方に聞いてもそういわれます。私ども在外の支店長のいろいろなヒヤリングを聞いても、とてもビザが下りないから来れないとか、学生交流や大学の先生だけれども来れないということがたくさん起こっています。観光交流という側面からすると、枠をはめて10日間とか15日間でもいいですから、できるだけ査証取得を簡単にしていくということがない限り、おそらくこの335万人が倍になることは極めて厳しい状況です。これは制度的な問題だと思います。
3番目は、井戸さんからもご報告があったように、言葉と標示の問題ということがあるわけです。私たちが、例えばまったくわからない文字の国、中東の国で日本語も英語も何も書いていないところに行ったときに、どのぐらい不安を感じるでしょうか。一人で歩くような状態はたぶん想像できません。それと同じことで、日本語ばかり書いている地域というのは、外国人にとってはまったく恐いということになるわけです。しかし、例えば福岡は今、表示などがハングル文字、英語もきちんと書いているところが多いです。大阪、あるいは関西についてはまだまだ貧しい状況です。
4番目に、旅館施設の問題があります。和室が多すぎるというのは、外国人にとってプライバシー

 

 

 

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