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うのは大変ひどい人たちだと聞かされていたけれども、ここに来てホームステイしてみるととんでもない。そんなことはない。今までの認識を改めた」といって帰っていく子どもたちが増えてきたというような大変うれしいこともございます。
さて、このようなまちづくりと観光、あるいは地域の活性化と国際交流の関係はどういうところにあるのかと思うのですが、まちづくりの最初、原則の第1段階と申しますか、それは自らを知るということだと思います。自分たちのまちはどんな特色があるのか、どんないい点があるのかということを探し出して、それを磨き続けていくということ、これが第1原則です。第2原則は、足らざるを知ってそれを補っていくということ。第3原則は、その両方を続けていくということ。磨き続けて、足らないものを補い続けていく。それは輪を広げて補い続けていくということになりますが、それがまちづくりの三大原則だと考えています。
この観光、外からの人と交流をするという意昧での観光、あるいは外に出て行って違ったものを観てくるということは、まさに自らのもつ特色を知る契機になると思います。外から来た人に対しては、自らを知らないと相手に自分は何者であるかを語ることはできません。人から聞いてもらえなければ語るチャンスもありませんから、言葉にして自分は何者かということを語ることもできません。また、相手に理解してもらうためには、相手を知らないとコミュニケーションがとれないということがあります。ですから自分、わが事を語るということは、自分を知るということでもあり、相手を知るということでもあると思うのですが、本当の意味での民際外交というのはそういうことだと思います。問うてもらって応えていく。そして自分も勉強して、相手を知るということだと思いますが、それができるのは、このような外の空気を入れること、外に空気を求めていくということではないかと思っております。
さて、それがまちづくりと国際交流、あるいは観光の関係ということになるのですが、今後の課題としましては、一つは、まず、まだまだ地元資源の評価というものが足りません。自らのもてる財産を認識して磨き上げていくというまちづくりの第1原則が、なかなかできていません。古くから伝わるいいもの、それから新しく最近できてきたふるさとづくリ、創生事業のなかでずいぶんあちこちにいいものができてきたのですが、それが財産になっていないということがあります。ハードはあるがソフトがないということも多いのですが、そのような地元資源を評価するということの作業がまだできていないということです。それが評価できた場合にどうやって売っていくか、観光商品化するかどうかはその後の問題だと思いますが、観光商品にするためには、観光商品にするのだという視点で売っていかないと商品にはならないと思います。
例えば、滋賀県は図書館ツアーというのが大変盛んです。昭和55年以降、図書館が新しくどんどんできて、図書館づくりのメッカのようになっているのでツアーが多いのですが、それを観光商品とは誰も思っていません。まちづくりツアーも盛んです。長浜の黒壁を中心にしたツアーというのはたくさんあるのですが、それに一般観光客が来るのは観光客だと捉えていますが、まちづくり視察ツアーをはたして観光と捉えているかなという気がしております。そういう意味で、観光視点から財産を洗い出してネットワークし、それを情報化する専門の組織が必要なのではないかと思っておリます。
数年前にアメリカのコンベンション・ビューローを訪ねたときの思い出をお話しして、私の最初のお話を終わりたいと思います。私が訪問したときに相手になってくださった職員の話ですが、「テレビを売るときにはいかにこのテレビがいい性能をもっているか、どういうデザインか、どういう特色をもっているのか、ほかと比べてどういうところが魅力なのかということを説明して私たちは売ります。私はこのまちをテレビを売るように商品として売っています」というのが、その方のお話でした。そういうことが必要ではないかなと感じております。
●阿部 ありがとうございました。滋賀県でのご経験をふまえまして、先ほどの井戸さんとのお話とも重なるのですけれども、「我を知り相手を知る」というのはまさにマーケティングの原則でして、何を売るのか、観光ということで何をするのかということは、まさにそれを商品としてマーチャンダイジングしていくというところに関わるテーマかと思います。どうもありがとうございました。続きまして、JTBの清水さんにお願いしたいのですが、先ほどの白幡先生のお話の中でJTBの出生の秘密が暴露されたわけですが、今をときめく、世界最大の旅行代理店として、地域を中心とした

 

 

 

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