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です。また、滋賀の場合は、1979年に滋賀県友好親善協会ができています。これも先ほどの喜賓会と大変似ています。外国に行ったことのある人たちが協会をつくって、外国から来た方々を受け入れて友好親善を図ろうという協会です。国の流れをそのままあとを追って、昭和のはじめとか戦後に追いついてきているという気がします。
ただ、そのあとは大変に早いのです。滋賀の場合は湖を縁に、アメリカのミシガン州、ブラジルのリオグランデ・ド・スール州、中国の湖南省という三つの州省と友好提携をしているのですが、県下50の市町村のうち21の市町村が世界のさまざまな国の35都市と、友好提携をしています。その交流の仕方もさまざまです。お互いに交流をして行ったり来たけするということもありますが、例えば公的なべースでは、ミシガン・ジャパン・センターが1989年、彦根に設立されました。これは、ミシガン州の15大学が連合して日本の拠点をつくりまして、それぞれの大学から何人かずつ送り込んで、日本に1年間住まわせて日本文化や、日本語の勉強をする拠点です。今年は滋賀県の国公立・私立大学が、これも最近誘致した大学が多いですが、このジャパン・センターで国際交流祭というのを共に取り組みました。とても盛り上がったようですが、そんな形で定着しつつあります。
また、民間企業では琵琶湖に船を浮かべている琵琶湖汽船というのがあるのですが、長いあいだミシガンの職業訓練校、ランシング・コミュニティー・カレッジの学生さんを夏のあいだ受け入れています。日本文化を教えながら、生け花とかそろばん、着物の着付けといった、私たち日本人でも習わないようなことを教わった学生さんたちがアメリカに戻って、観光の仕事につくということを長くやってきておられます。このような国際交流べースの仕事が一方であります。
それから研究べ一スの仕事としては、湖の保全の交流というものがあります。1982年に県立で琵琶湖研究所が設立されましたが、これが拠点になりまして「世界湖沼環境会議」を開きました。この延長線上に1992年にUNEP環境技術センターが滋賀県に一つの拠点を設けたり、ごく最近には琵琶湖博物館がオープンいたしまして、国際シンポジウムが開かれたりと、湖の保全をめぐっての交流というのが深化をしてきております。これは一つの例示なのですが、テーマを設定し、それを重ねていって交流を深めていくというようなことが行われるようになってきております。
また、ごく最近、これは第3番目の段階だと私は捉えておりますが、今度は民間の中での交流が始まりました。まちづくりのなかでと申しましょうか。第1期は、最初に申しましたように国の真似をして友好親善をやってきた時代です。2番目は、少しそれが特化して深化してきた時代、これは自治体外交と申せばいいでしょうか。それから、今度は民際外交の時代に入ってきたという3番目です。いくつか事例があるのですが、時間の関係で今日は一つだけご紹介したいと思います。
滋賀県の北のほう、今有名な長浜のもう少し北のほうに高月町雨森区という115戸500人の集落があります、雨森という名前のとおり、江戸時代の先駆的な外交官雨森芳洲の出身地です。この自治会では、この雨森芳洲を中心にまちづくりをしようと、1984年に滋賀県と高月町の援助を得て、東アジア交流ハウス雨森芳洲庵をつくりました。ここは雨森芳洲の事績を記念するだけではなくて、雨森芳洲に倣って私たちも同じことを今やっていこうということを始めております。例えば、標示をハングル標示にするということ。それがご縁で在日の人々が大変感激して来られるようになりました。また、韓国から修学旅行生がやって来て、ホテルがあるような村ではありませんからホームステイをする。先ほど岡山の国際交流ヴィラの話がありましたけれども、そんな人たちを受け入れて、さまざまなイベントを一緒にやっていくということを始めております。最近では「ハングル楽習塾」というのを開いて、小学校5,6年生が20名ぐらいずつ、ハングル文字を勉強するようになったそうです。
このような国際交流をやると同時に、美しいまちをつくっていくという運動をしております。1985年に、滋賀県では「ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例」という大変長い名前の条例ができました。この条例は地域の人たちが、「私たちのまちはこういう特色をもったまちにしましょう」という協定を結んで、まちを美しくするというしくみを組み込んでいます。その協定第1号がこの雨森区で、今や大変美しいむらになっております。たった500人の集落なのに、年間3万人が視察に訪れるような地域になってきております。こういう交流は、まさに民際外交といっていいのではないかと思います。そのなかで、韓国から修学旅行にきた子どもたちで、「私たちは学校で、日本人とい

 

 

 

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