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というのがあるんですが、これは実は大変よくできていると思うんです。家の中に土間があるということが。これは、宇部興産はセメントを産出なさいますけれども、そのセメントでたたいたところですと埃がたちますし、それから湿度の問題とかあるんですが、たたきというのは粘土に石灰を入れるんでしょうか、非常にたたきこんで埃がたたない。それから逆に乾燥は防ぐ。そして乾くときには乾くという、そしてそこには土間から直接に上がり框に腰をかけることも可能だし、縁側にも通じるというふうな、そういうゆとりの空間ですね。
 今は、現代人というのは余りにもスピードと効率を重んじる余りに、速く速くと、そして量というものを余りに重要視するわけなんですけれども、その反対の一つの効用ですね。ゆったりとしていること。しかも安全であること。しかもそれには、あらゆる有効的な素材や技術を駆使したことを考えていくということですね。それは私どもが今安易に捨て去っていった技術をやはりもう一度考え直さなきゃいけないようなところに多分来ているのではなかろうかと思うわけです。そのときに、そういう空間を保つことができるのはこれは決して個人一人が趣味の問題でたたきを残したいと、家にたたきを残したいといってもそれはできないわけです。やはりそれは集合体としての人間、あるいは後ほど出てまいるかと思いますけれども、経済その他の効率の問題、いろいろなことが組み合わさって初めて、私どもの人間の生活ができ上がっていくわけなんですけれども、そのことをひとつ、一度ゆっくりと立ち止まって考えてみるという時期に今きているのではなかろうかと思うわけです。
 もう一度ゆったりと、そして安全であるということを、もう一度考え直して、そしてそれは余りにも速い回転、余りにも速い効果というものを求めるのではなくて、ゆっくりと安全にというふうなことを御提言申し上げたいと申し上げたいと思うわけです。
 以上でございます。
〔脇坂先生〕
 それでは続きまして、秋吉台科学博物館の庫本正先生、お願いします。
〔庫本先生〕
 庫本でございます。
 私は秋吉台にいまして、秋吉台から物を考えるということで、今日こちらに寄せていただきました。秋吉台というのは2つの顔がございまして、その1つは自然科学の上で大変重要な場所で、日本列島の起源を論ずるのに、その元になる大変重要な場所だと。そういうことと、もう1つは、やはりたくさんの人が秋吉台にやって来て自然を楽しむという、そういう山だということでございます。で、あそこに博物館が昭和

 

 

 

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