
態のときっていうのはどこかに消し飛んでいってしまって、ただ本当に思考力だけっていうものが温かい日差しの中にふわふわ浮いているという形で、そういうときにはいろんなことを次から次へと空想していってしまって、それが高じた結果小説なんか書いてしまったわけなんですけれども。
私は清張賞をいただいたような作品とは別に、若い女性向けのいわゆるジュニア小説の文庫本を2冊ほど出していまして、実は出版していただけるということになったときに、それまで自分では書いてみたんですけれども、いわゆるジュニア小説っていうものを一度も読んだことがなかったのでこれではいけないということで、ちょっと勉強してみたことがありました。そのときに出会った本というのが、田中芳樹さんの描かれた「銀河英雄伝説」という、新書版にして全10冊プラス外伝が4冊というふうな長い長い物語なんですけれども、この本は、別にジュニア小説というわけではないんですけれども、また最近発刊された本でもないんですけれども、高校生ぐらいの若い人達の間でもう発売以来10年近く連綿として読み継がれてきた小説ですので、本当にじゃあどこがそんなに若い人達にとっておもしろいのだろうかということで勉強のために読んでみたわけなんです。
この「銀河英雄伝説」という名前からおわかりのように、スペースオペラといいまして、宇宙を舞台にした活劇といいますか戦記物といいますかそういう小説なんですけれども、その根底に流れるテーマっていうのは、民主政治というものが生まれて、育って、衰えてまた再生するという有り様を描いている本なんです。登場人物が大変魅力的ですし、ストーリー自体が本当に息をっかせぬほどのおもしろさなんですけれども、読んでいてちょっと疑問に思ったことがありまして、その疑問っていうのは話は確かにすごくおもしろいんだけれども、こんなに活字がびっしりと詰まっていて、おまけに著者の歴史観とか体制批判とか政治談義とかがもうほとんど3分の1ぐらいを占めているような本を、これを本当に高校生が読むんだろうかというふうに思ってしまいました。でもよく考えてみますと、それはおもしろいけれども難しい部分があるから読まないというわけではなくて、難しい部分がおもしろい部分の中にうまく取り込まれて巧みに融合されているから、高校生達も喜んで読むんだというふうに、そういうふうに考えてみました。
それはさておき、ふるさとの環境を守りたい、よくしたいということを考えたとき、私はまず中学生や高校生ぐらいの若い人にこそ、そういうことを日常的に考えてほしいと思って、どうしたらそういうことができるかなと思って頭をひねるんですけれども、そのときにこの「銀河英雄伝説」というものを思い出しまして、本当に故郷の環境問題とか、引いては地球全般の環境問題について若い人達にストレートに突きつけるやり方っていうのもあると思いますけれども、頭ごなしに押しつけるのではなくて、いかにして自主的に興味を持たせるか、その方法っていうものを工夫してはどうかと
前ページ 目次へ 次ページ
|

|