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うものを環境の悪化というものに置き換えてみたらどういうことになるだろうかというふうに、私はNHKの番組を見ながら考えてみました。
 例えばオゾンのことを例にとってみますと、オゾン層が破壊されるといろいろな影響が本当に複雑に絡み合いながら多岐にわたって出てきますけれども、その中でも有害な紫外線がどんどん地上に降り注ぐということがあります。で、その紫外線を浴びた人間というものを抗生物質の毒にさらされた細菌っていうふうになぞらえて考えてみますと、人も細菌もそういう環境の激変に対して、何とかしたい、何とか生き延びたいと考えますけれども、人と細菌っていう2つのものの間には大きな違いがあって、細菌というものはたった1つの細胞からなっている単細胞生物ですから、人間に比べれば非常にシンプルなもので、それこそ本当に遺伝子を臨機応変に変化させて、自分自身の体の仕組みを変えて、ごくごく短時間のうちに抗生物質への耐性を身に付けることができるんですけれども、人間というものはご存じのようにこんなに複雑な生物ですし、ある意味ではすごく脆弱な生物ですので、そういうふうなことには簡単にはいかない。例えばの話ですけれども、紫外線を浴びても平気なそういうスーパー人間みたいなものに人間が進化するまでには一体どれほどの時間がかかるかというと、本当にもう気が遠くなるような時間が必要で、それまでには人類というものが死に絶えてしまっても不思議はないと思います。
 では、その細菌のように簡単に自分自身の方を変えて環境に適応していくものができない人間というものは一体どうしたらいいかということですけれども、大変周りくどいのですが答えは明らかで、環境の方を悪化させない。人間の方で環境を保全するために努力して、本当に努力して環境の方を保っていくというこれしかないわけです。幸い、細菌と違って人間は、自分自身の体を変化させることはできませんけれども、環境に介入する、よい意味で改善する方向に介入するっていうことはできますので、そういうふうなことをしていくしかありません。そしてそういうふうにしか人間が生き伸びる道はないんだというふうに、細菌がテーマの特集番組から随分飛躍してしまいましたけれども、テレビを見ながらこんなことを考えてしまいました。
 さて、紫外線を浴びても平気なスーパー人間とかいうふうに話の内容がSF的になってしまいましたけれども、これは私がそういう空想科学小説が好きなせいで、そういう空想自体が好きっていうのは、ふるさとの大島の影響が大きいと思うわけです。ふるさとの大島っていうのは空想好きな子供にとってもとてつもないよい環境だったというふうに、今にして思います。本当に春の日にぽかぽかと日の当たる縁側に寝ころんで新芽が燃えている白木山を眺めながら、ウグイスが「ホウホケキョ」と鳴いている声を聞いていますと、本当に自分が自然の中に溶け込んでいってしまうというような、あるいは自然の方が自分の中に流れ込んでくるというふうな、そんな錯覚をよく覚えたものでした。そういう時間の感覚とか肉体の感覚というものは、そういう状

 

 

 

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