
う膨大な数の医師とか歯科医師のうちの本当に1人ではありますけれども、自分がそういう抗生物質をルーティンに処方することで、世の中の耐性菌が増えることにできるだけ加担したくないという、そういう良心的な気持ちから私にちょっと質問してきたわけなんですけれども、残念ながら私の方は抗生物質に詳しいっていうことは全然なくて、難しい質問を受けちゃったなあと思いながらいろいろ調べていたんですけれども、そんなときにちょうど先日ですけれども、NHKの特集番組で耐性菌の問題が取り上げられていましたので、早速チャンネルを合わせてみました。ご覧になった方も多いのではないかと思います。その番組なんですけれども、病原菌を殺すために開発された抗生物質というものが余りにも効果が高くて便利であったために、医薬品としてだけではなく、家畜の飼料なんかにも混ぜられて、大量に安易に消費されてしまったためにそういう状況になってしまったということと、そしてその状況が、抗生物質の効かない耐性菌の出現を許してしまって、人類は今その対応というものにすごく苦慮しているという内容でした。
耐性菌の出現というものは、最初の抗生物質であるペニシリンが開発されてからもう4年後にはもう認められていたといいますから、抗生物質の歴史というものはイコール耐性菌との歴史といってもいいわけなんですけれども、実際のところ本当に、新しい抗生物質というものは耐性菌を殺すために開発されて、その新しい抗生物質に対してまた再び耐性菌が生まれてしまうと、さらにその新しい抗生物質を開発しなければいけなくなるという、イタチごっこな状態になっています。
この問題に関しては、院内感染を引き起こすMRSAというメチシリンという抗生物質を与えても死なない黄色ブドウ球菌という問題で随分騒がれてましたので、御記憶の方も多いかと思います。このときのNHKの番組を見まして、私は本当に抗生物質の乱用っていうのは、自分で自分の首を締めることになるという、ああ怖いなっていう、そういう真っ当な感想のほかにもう1つ別な感想を持ちまして、言葉はちょっと変ですけれども、細菌達もよくやるなあっていう感じで感心してしまったというか、そういうことなんです。
細菌側にしてみてば抗生物質というのは自分達を殺す恐ろしい毒素なわけです。で、その毒素から逃れるにはどうしたらいいかといいますと、遺伝子をいじって自分達の体の仕組みを変えてしまうわけです。毒素に耐えられる体にするとか、その毒素をやっつけるような酵素を出すような仕組みをつけ加えるとか、そういうふうに自分を変えられたものだけが抗生物質の攻撃をかいくぐって生き延びることができるわけなんです。細菌っていうのは、中でも病原菌というものは人間にとっての悪者であって、細菌自体は人間にそうやって感染するのも抗生物質の耐性を獲得するのもみんな生きるためであって、彼らも必死なわけなんですけれども、一寸の虫にも五分の魂っていう形ですけれども、ではその細菌っていうものを人間に置き換えて、抗生物質ってい
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