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もやもやっていうふうに見えるのは当たり前です。そういうふうな物が光を乱反射したり吸収したりしながら、私達の前に横たわっていたわけなんです。
 当時は、もちろん大阪だけがそうだったわけではなくて、都市部ですとか、工業地帯ですとかはそういう状態だったと思います。今でもそういうところが多いと思いますけれども、ただ本当に18歳だった私にとってはすごくびっくりしたことだったんです。
 それで、その驚いた気持ちっていうのを長年忘れずに持ってきましたけれども、最近ではその気持ちっていうのを、白分で持っているだけじゃなくて、人に伝えなければいけないんではないかなということを思っています。その理由はちょっと後で述べますけれども−−。
 ちょっと話はそれて、現在、私は神奈川県の茅ヶ崎市というところに住んでおります。この茅ヶ崎市というところは、ご存じの方はご存じかもしれませんけれども、サザンオールスターズの曲なんかにも出てきて、本当に湘南のメッカのように言われている土地なんです。関東の人達が湘南に対して抱くイメージというのは、例えば太陽が燦々と降り注ぐ明るい浜辺ですとか、白い波に青い海ですとか、日に焼けたサーファーですとか、そういうイメージを持っていますので、当然空気なんかも都心に比べるときれいだっていうふうに言われています。けれどもその茅ヶ崎ですら、全天がすかっと晴れた青空っていうものを私は見たことがないんです。ですから、茅ヶ崎で生まれ育った子供っていうのは、空とはそういう2色に分かれているものだというふうに思ってしまうかもしれませんし、また都心で育った子供というのは、その2色の灰色の部分がもっと濃くても空とはそういうふうなものだというふうに思ってしまうかもしれません。
 たった今、「子供」と申しましたけれども、実はそういう空の下で育った子供はもう既に子供ではなくて、例えば学校の先生だったりとか、トレーラーの運転手だったりとか、化学プラントの責任者だったりとか、あるいはもう環境庁の長官だったりとかするかもしれません。そういうたくさんの人達が、これからの環境間題を考えたり、またもっと若い世代に環境間題を教えたりするわけなんですけれども、一方で、もっともっと青い空というものをもう自分の目で見て知っている私のような地方出身者もいるわけです。美しいふるさとの大島で、青く晴れ渡る空、その空と響き合うようにして広がっている青い海、そういうものを知っている者です。で、そういう私達もまた環境間題について考えます。
 するとどういうことが起こるかということになりますと、そういう2色に分かれてしまった空を当たり前と思ってきた人達と、それから私のように青い空を当たり前と思ってきた人達との間では、感情面で大きなギャップがあるような気が私はしてます。環境に対する危機感ですとか、理想とする環境のレベルですとかが違っているのでは

 

 

 

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