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組織に分かれているが、受ける高齢者はひとりの人間である。したがって、総体としてのサービスが必要になるが、現実は縦割り行政の弊害がかなり強く、例えば医療・保健・福祉といったものの連携がうまくいかず、最適なサービス供給ができないケースがよくみられる。
最近の地方分権論の中でも指摘されている保健所長は医者でなければならないという規定の改正、あるいは福祉事務所と保健所との関係などは一部改善されそうな点もあるが、昨年末の地方分権推進委員会の第1次勧告の内容を中間報告との比較でみる限り、各省の抵抗は強く、中間報告からかなり後退した点も見受けられ、各省の権益争いの強さを示す結果となっている。
第四の点は人材の問題である。一言で言えば福祉人材の待遇を改善する必要がある。福祉に従事する人たちのステイタスを上げることによって、福祉従事者が誇りをもって仕事に従事できるよう待遇改善を図る必要がある。真の福祉を支えるのは心から福祉に生きがいを感じ、献身的に職務を遂行する人たちであり、そういった人たちが満足して働けるように一定のステイタス向上が図られる必要がある。
最後の課題として少子化の問題点についてふれておきたい。現在の少子化の問題は、社会の近代化の必然であり、1940年代のベビーブームの終焉をもってすでに少子化社会は始まったという指摘はともかく、少なくとも今後、高齢化率が極端に高くなり、超高齢社会が予想より早く到来する最大の要因は未婚率の上昇等により合計特殊出生率が下がったことによる少子社会の到来が相対的に高齢者の比率を上げていることにあることは疑うべくもない。
したがって、この問題の解決なくして高齢社会の対応はあり得ないといっても過言ではない。しかし、国に於いてもエンジェルプランの策定など若干の施策は取られたものの、ほとんどの対策は高齢化の方に向けられ、本格的な少子対策については皆無と言えよう。団塊ジュニアと言われる現在20代前半の比較的数の多い女性が今後、出産適齢期に達するが、この間に人口の増加が望めない限り、21世紀初頭に現実に人口が減少しかかった時からではもはや手遅れである。その頃には団塊ジュニア世代はすでに高齢出産期に入り、多産は期待できない。一日も早く政府が本腰を入れて国民各界各層を交えた真剣な議論と住宅、教育、女性の雇用など総合的な対策が期待される。

 

 

 

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