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3 今後の課題と展望
最後に、今後の課題と展望についてふれておきたい。課題としてはいくつもあるが、ここでは次の五点について指摘しておきたい。まず第一は、財源問題である。福祉の分野はとにかく人手がかかる。そして、いったん人を雇うと人件費の負担が長期にわたり続き、財政硬直化を招くことになる。この点が福祉問題の最大の課題である。特に、福祉の問題は国民、市民にとって差し迫っている課題であるが故に、予算を認めざるをえなくなる傾向にあるが、いったん認めた場合には消費性向の下方硬直性と同様、水準を下げることは極めて難しく、将来にわたり相当の財源負担を覚悟せざるをえない。その帰結はすでにスウェーデンの福祉社会が示している如く、高福祉高負担ということになろうが、そういった選択をするには基本的にわが国の国民負担率をどのレベルにするのか、スウェーデン型の福祉を選択するか、アメリカ型の福祉社会を選択するのか、幅広い層を巻き込んだ真剣な議論が必要であろう。また、財源問題に関連して大都市に特徴的な問題として土地問題がある。特別養護老人ホームを建設する場合には用地取得が困難であり、それがネックとなって建設が計画通り進まないケースがよくみられる。勿論、特養自体が都会においては迷惑施設とみられ、住民に歓迎されない場合もあるが、現行の国庫補助制度では用地取得に対する国庫補助がないため、特に大都市のように土地価格が高いところでは地方自治体の負担が大きくなっている。
今後はそういった点が地域間での福祉水準の格差となることも懸念される。住民がより福祉水準の高いところで老後を過ごすために移住する、いわゆる介護移住といった現象も最近では散見されるようになってきたが、こういったことを考えると大都市における土地問題が福祉水準の向上を大いに妨げている現状をなんとか打開することが必要であろう。
第二の点はハードとソフトのバランスの問題である。すでに指摘したようにわが国の高齢者福祉間題のポイントは、高齢化のスピードが異常に早いということであり、そのことが施設整備施策とソフト施策とのアンバランスを招来している。現在、政府において公的介護保険が検討されているが、公的介護保険が導入される時点では、せめて老人保健福祉計画が達成されている必要があり、もし、それができていなければ介護サービスにおいてかなりのぱらつきが生じることになる。
第三の点は縦割り行政の弊害の克服である。サービスを供給する側は様々な、

 

 

 

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