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最後に今後の方向を示すことによって展望にかえたい。
まず必要なことは、必要な時に必要なサービスが供給できる介護システムを構築することである。介護の問題ほど経験した人としない人とで認識に差が出る分野は少ないと言われている。経験してみて初めて「ハット気付く」というのが介護の世界である。その時、本当に必要なサービスが受けられる体制にあるのだろうか。特養にしても1年近く待たなければ入れてもらえないという現状では、とても安心して暮らすことはできない。
スウェーデンの豊かさは ?金 ?安心感 ?時間とも言われている。今後の施策として、将来に対し安心して今日を過ごすことのできる社会の構築が大切である。今ひとつは、これまでそれぞれの分野でバラバラに供給していたシステムを統合化することである。例えば、よく言われるように保健・医療・福祉の連携、あるいは高齢者の中で健康な高齢者のパワー、経験・ノウハウなどを十分に活用し、高齢者が高齢者を支える、あるいはNPO・ボランティアなどのいわば第三セクターとも言われる分野の人々との連携、協力のもとでのサービス供給といったように様々な資源を組み合わせ、総合的にサービスを供給するシステムを構築することが必要である。また、そのためには現在の男性の意識変革も必要であろうし、これまでの血縁にかわり友人、知人のネットワークが共同生活という形で新たな機能を持つことも考えられる。
そういった新しい芽はすでに出始めており、今後はこれまで長年築いてきたシステムを今一度見直し、時代の新しい流れの中で新しいシステムを創造していくことが必要である。そして、なにより大切なことはスウェーデンのように政府と国民との信頼関係である。高福祉・高負担を支えているのは国民の政府に対する信頼である。政治が国民の信頼を取り戻さない限り、日本の福祉の将来は決して明るいものにはならないであろう。

 

 

 

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