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越える相談を受けている。現在(平成6年)のこの事業の対象者は市内で647人にのぼり、参加主治医は589人になっている。
保健所・主治医・社会福祉事務所それぞれが情報交換をしながら連携し、寝たきり高齢者にサービス提供をしていこうとするもので、保健サービスでみれば保健婦を中心とした訪問指導(8,336回)、訪問健康診査(280回)、療養相談(1,607回)となっており、医療サービスでは訪問診療が10,000回を越え、往診・訪問看護などは3,500回弱となっている。福祉サービスではホームヘルプサービス(4,706回)、デイサービス(1,622回)、移動入浴(4,332回)、短期入所(257回)といったそれぞれの実績をあげており、他都市に類例をみない独自のシステムとして機能している。
(図3)
(3)バリアフリーのまちづくり促進策
お年寄りの社会参加を促進するため、まず、積極的に外出したいというインセンティブがなければならない。ところが現実には外出意欲を妨げる障害物が実に多い。まず、外出しようとすれば多くのお年寄りは公共交通機関を利用する。だが、料金が高いため障害となっている。(この点に関しては本市の場合、65歳以上のすべてのお年寄りに敬老パスを支給しており、色々議論はあろうが社会参加促進のひとつの手立てになっていることは事実であろう。)
今ひとつは階段の段差等各種のバリア(障害物)である。年を取ると骨がもろくなり、本人の気持ちのとおり体が動かないため、つまづいて転倒することが多い。いったん骨折すると元に戻るのに時間がかかり、そのまま寝たきりというケースも多い。
お年寄りにアンケート調査を実施した結果によると、お年寄りが一番嫌がるのは地下鉄の階段である。水平に移動する場合に比べて、垂直の移動は10倍ほどのエネルギーを消耗すると言われているように、地下鉄の階段を昇降するのはお年寄りにとっては大変なことである。
本市のお年寄りの中にもいかにして階段を使わずに目的地にたどりつけるか、地下鉄のいろいろな利用ルートを考え、それが仲間内で人気であるという話を聞いたこともある。お年寄りは時間的余裕はあるので、多少遠回りしても、少しでも楽な方法を考えているようだ。このことは階段がお年寄りにとっていかに大変であるかを教えてくれる。

 

 

 

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