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かって、アメリカの女性インダストリアルデザイナーのパトリシア・ムーア女史は80歳の女性に変装してニューヨーク市内を歩いてみた結果、いかに現在の街が高齢者に配慮したデザイニングがなされていないかを「変装」という本の中で述べている。本市としては高齢者・障害者にやさしい街づくりはすべての人にもやさしい街づくりになるとの信念のもとに「人にやさしい街づくり」を推進してきた。そうした流れの中で、ここでは次の二点について紹介してみたい。
?高齢者対策事業基金
この基金は温もりのある、人にやさしいまちづくりを推進するとともに、在宅で安心して生活ができる在宅福祉サービスの充実を図るために積み立てるもので、約10年間を目途に積み立て総額300億円以上積み立てようというものである。平成2年に当初50億円を積み立て、その後、毎年30億円を積み立ててきたが、平成7年からは財政難のあおりを受け、約10億円の積み立てとなっているが、現在(平成8年)までに約200億円を積み立て、そのうち120億円ほどを取崩しており、現在の残高は80億円ほどとなっている。基金は当面、主としてバリアフリーの街づくりを推進するための道路の段差解消、公営交通施設の出入口のスロープ化など社会資本ストックの充実に当てるために取崩し、約半分は21世紀以降特に必要となるであろう在宅サービス提供拠点の整備、ケア付住宅を始めとする高齢化対応住宅の確保などの自立援助のための施設等の整備、あるいはホームヘルプサービス事業、デイサービス事業などの在宅福祉サービス事業の安定供給に当てる予定である。
?福祉のまちづくり事業(千種公園周辺モデル地区整備)
本市では平成3年11月に「福祉都市環境整備指針一人にやさしいまちづくりをめざして−」を策定した。指針では福祉の環境整備の基本的な考え方を明らかにするとともに、520項目に及ぶ技術的基準や公共的建築物・道路・公園・公共交通機関といった都市施設の整備方針などについて定めている。そして、指針では次の三つの基本理念を掲げ、都市環境整備を進めることとしている。
すなわち、
ア.人間性が尊重された生き生きとしたまち
イ.人にやさしい快適環境のまち

 

 

 

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