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(3)「面」の整備〜「密集住宅市街地整備促進事業」について 注12
ア 密集住宅市街地への着目
川崎市における各都市拠点においては、第一種市街地再開発事業などにより、既成市街地におけるダイナミックな土地利用転換が図られており、計画的な街づくりが着実に積み重ねられている。都市拠点開発については、事業実施の過程で様々な問題はあるにせよ、整備後の都市像や整備の方向性がイメージできるものになっている。
これと比較し、川崎市における一部の住宅系市街地では、戦後大きな面的整備がされず、高度経済成長の下で敷地の細分化が行われ、狭隘道路沿いに老朽した木造賃貸住宅が密集するなど、住環境において多くの問題を残している。これらの地域は、2(1)で述べたとおり、高齢世帯が木造賃貸住宅に多く居住しており、今回のテーマである『バリアフリーのまちづくり』を実現するうえで、避けて通れない問題となっている。
イ 対象地区の現状
住環境整備のための住宅市街地整備手法としては、密集住宅市街地整備促進事業をはじめ、多くの手法が統合整備されている。だが、密集住宅市街地整備促進事業の対象区域としての指定をしても、地主が建て替えや共同化を行うかどうかは自由意志にまかされており、切迫した事情のない限り地区環境が改善される保証はない。
現在、川崎区の特定地域が密集住宅市街地整備促進事業の対象地区として指定されているが、事業は遅々として進まない。この原因は、所有権・借地権などが複雑に入り組み共同化への抵抗が大きく、また、補助基準が地区更新にあたっての動機づけるほど、強いインセンティブを与えていない点にある。さらに、防災、福祉、住宅環境といった点から行政側が問題のある地域だと指定したとしても、長い間住み続けてきた人々による良好なコミュニティが築かれており、現状を変えていくことが難しい側面もある。
ウ 市民コンセンサスと都市像の明示
事業推進の一番の課題は、住民の意向に従えば、コミュニティを核とした小規模な地区整備が必要となり、事業の持つ広域性とのずれが生じていくことにある。今後、細目にわたる事業採択基準との関連で川崎市がどのような負担をするか、地域住民の意向を踏まえながら検討を行う

 

 

 

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