日本財団 図書館


2 総合的な施策の展開
『バリアフリーのまちづくり』は福祉施策のみによって形成されるものではなく、様々な施策の組み合わせによって初めて有効なものとなる。これは、「まちづくり」すべてに及ぶものであり、また、国の施策との関連、民間のシルバー産業の動向も含め、自治体としての総合性が求められる分野である。
ここでは、施設単体としての「点」を適路や公共交通機関「線」で結び、「面」として地域全体の整備を図るという視点にたって、川崎市の各施策を整理することとした。
(1)「点」、施設単体の整備
川崎市では、すべての市民が住み慣れた地域で安心して快適に生活できる都市施設の実現のために、「福祉のまちづくり環境整備要綱」を作成している。当該要綱は、施設管理者が建築確認申請書提出前又はその他の施設の施工申請前に市長との協議を行うことを義務づけており、一連の手続きの中で対象施設に関する環境整備の具現化(注1)を図っている。
都市施設の整備は、国の施策や民間ディベロッパーの努力も含め、様々な施策の展開(注2,3,4)によって改善は進みつつあるものと考えられる。
だが、川崎市の住宅事情に眼を向けた場合、住宅統計調査(注5)によれば、川崎市世帯総数(449,160世帯)のうち、最低居住水準(注6)未満世帯の比率は14.7%(65,300世帯)となっており、また、最低居住水準未満世帯における高齢者世帯の比率は10.7%(8,380世帯)である。
65歳以上の高齢者が家庭内で事故死する率は全年齢のうちの67.7%(注7)を締めていることを考え合わせると、バリアフリーのまちづくりを進めるにあたっては、高齢世帯が多く居住する木造賃貸住宅(注8)などの整備を抜きにして考えることはできず、「面」的な整備という視点からの施策展開が必要となる。
(2)「線」、動線の整備
「点」としての施設単体の整備、住宅環境の改善が進んだとしても、目的地までの動線が整備されなくては、車椅子利用者などの自由な移動が制限される。
動線の整備は、運賃割引制度などのソフト系の施策(注9)と、歩道と車道の分離や道路整備改善などのハード系の施策に分けることができる。ハード系事業については、「福祉のまちづくり環境整備要綱」において

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION