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システムとしては、ケアマネージメントがあげられる。ケアマネージメントとは、保健・医療・福祉の各分野にまたがってサービスの供給を受けることが必要な高齢者に対して、それぞれの分野の専門家が連携し、個々の高齢者のニーズに見合う適切なサービスの提供を身近な地域で支援するものである。最近、このケアマネージメントの重要性がいわれるようになった背景としては、サービスの種類や内容を知らない人が多いこと、サービスを提供する主体の増加やサービス内容の複雑化により、それぞれの主体相互で互いのサービスを把握していない場合があること、サービスの適正な配分についての関心が高まってきていることなどがあげられる。
サービスの需用者一人一人に対してケアマネージメントを行い、ケア計画の作成、実行、評価、再作成を行い、適切なサービスを提供していくことは重要な施策であり、有効に機能した場合、保健・医療・福祉の連携はかなり進んだものとなることが期待できる。しかし、実際には、複数の機関や部局との連携を十分にとれない場合や、ケアマネージメントチームが単なる連絡会的なものにとどまってしまう場合もあることや、特に医療の場合のように行政以外の主体がサービスの提供を行っている場合には調整の難航が予想されるなど、その調整能力には限界があるものと考えられる。また、ケアマネージメントを担当する行政職員の確保・養成や、ケア計画の作成手法、評価手法の確立などが必要になるなど解決すべき課題も多い。
こうした問題点も踏まえ、今後行政は、職員の確保・養成に努めていくとともに、ケアマネージメントチームに対し、連絡調整のみならずサービス供給に関する一定の決定権を持たせ、地域内の医療機関や民間の福祉サービス供給主体とも十分に連携をとりながら、保健・医療・福祉の各分野の担当者が総合的な検討を行い、サービス供給につなげるケアマネージメントチームを高齢者により身近な日常生活圏域ごとに配置していくことが必要になると考えられる。いずれにせよ、今後の高齢者数の増加や行政におけるサービスの提供量の限界を考えると、より効率的なサービス提供を行っていく必要性は非常に高いと考えられることから、保健・医療・福祉の連携を前提としたケアマネージメントの普及・促進に努めることが今後ますます重要になってくるものと考えられる。
 
(2)高齢者に対する介護サービスの供給
高齢化社会においては、誰もが介護を必要とする高齢者となる可能性を持っていると考えられることから、高齢者介護の問題は限られた一部の人たちの問題ではなく、長寿化に伴い市民の誰にでも起こりうる普遍的な問題であるといえる。さらに、要介護者の数は今後とも増え続けることが予想されること、介護期間が長期化する傾向にあること・独居老人や高齢者のみの世帯が増えてきていることなどを考慮すると、これからの介護は要介護者の家族だけで担っていくことは非常に困難であり、今後、行政が介護サービスの供給システムを構築していくに当たっては、要介護者を市民全体、地域全体で支えあっていく体制の整備を如何にして行っていくかが重要な課題になるものと考えられる。

 

 

 

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