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条例の定める領域を確立することを目指している。これは、以下の4つに分けることができる(このうち、?と?は、法律と条例の関係一般について議論しているものである)。
?法律ナショナルミニマム論
国法は地域の実情を考慮せず全国的にみて環境を守るための最低基準であり、これで環境を守れない場合には、条例で上乗せ規制をすることができるとする。その理由付けとしては、公害現象の地域性・環境保全の価値優位性や、環境保護が固有の自治事務領域であることがあげられる。
?必要な公害規制禁止法律違憲論
地域社会における公害から住民の健康を保護し、生活環境を保全することは、地方公共団体が行わざるを得ない事務であることを前提とし、法律が上乗せ条例を絶対的に禁止する趣旨と解しなければならないものであるときは、憲法92条に違反しており、無効であるとする。
?規制限度法律(最大限規制法律)・最低基準法律区別論
「規制事項の性質と人権保障とに照らして、当面における立法的規制の最大限までを規定していると解される法律」(規制限度法律)との関係では、法律の示す規制限度を越えて規制しようとする条例は法律に違反することとなるが、「全国的な規制を最低基準として定めていると解される法律」(最低基準法律)との関係では、「上乗せ条例」が認められる、と説く。そして、規定内容が地方自治にかかわりをもつ法律である以上、事柄の性質に応じ憲法92条にいう「地方自治の本旨」を促進するように、法律を合憲的に条理解釈をしていく必要があり、この種の法律は、最低基準法律と目すべき場合がむしろ多いとする。
?生存権、地方自治権の自由権効に着目する考え方
地方公共団体が、住民の生存権保障に不可欠な措置をとるための条例を制定しようとしている場合に、法律でそれを禁ずることは、地方公共団体による住民の生存権保障を国が阻害することになり、そのような法律は生存権の自由権効に間接的に抵触し、無効であるとする。さらに、住民の健康や生活環境の保護のための条例の制定は、地方公共団体の「不可侵の自治権」にかかる任務であるが、このような事項は、国と地方公共団体が競合的に権限を有する領域であり、国の立法権も、地方自治の本旨に基づくように拘束されるから、この種の自治権を阻害する法律は違憲であるとする。
(3)内閣法制局意見(昭和43・10・26)
水質2法の規制と条例の規制との関係についてこの問題を扱った内閣法制局は、条例制定権の範囲は、国の制度が地域の実情を考慮して定められたものかどうかによって決められるとし、地域の実情を考慮して定められた規制の上乗せ条例は許されないが、そうでなければ条例で規制できるとした。
(4)判例
この問題を取り上げた判決としては、最高裁のものが2件ある。徳島市公安条例事件最高裁判決(最大判昭和50・9・10刑集29巻8号489員)は、「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみではな

 

 

 

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