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3. 旧法案の概要
 
(1)目的
昭和56年に国会に提出された法案(旧法案)においては、環境影響評価に関する国等の責務を明確化し、手続その他所要の事項を定めることにより、環境影響評価の適切かつ円滑な実施と公害の防止及び自然環境の保全への適切な配慮を行うことを目的としており、この点は現行の閣議アセスの目的と同じである。
(2)対象事業
対象事業としては、道路、ダム、鉄道等の建設や区画整理事業等規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれのあるものとして政令で11事業種が定められていたが、発電所は対象事業から除外されていた。
(3)評価対象
評価対象としては大気汚染、水質汚濁等公害防止に係るもの(7項目)と動物、植物等自然環境保全に係るもの(5項目)が定められており、主務大臣が環境庁長官に協議して対象事業ごとに定める技術指針に従って行うこととされていた。
(4)住民の関与手続
住民の関与手続については、現行の閣議アセスでは事業者が関係都道府県知事・市町村長の協力を得て実施することとされているが、旧法案では公告・縦覧は関係都道府県知事が実施することとされていた。
公聴会については、現行の閣議アセスでは何ら規定されていないが、旧法案では、関係都道府県知事は、必要に応じて公聴会を開催することができるとされていた。
(5)許認可等への反映
許認可等への反映については、現行の閣議アセスでは行政指導であるため、環境影響評価の結果については免許権者等に対し個々の法律に基づく行政処分の範囲内で許認可等における配慮を求めるにとどまっているが、旧法案では免許等の規定にかかわらず、環境影響評価の審査の結果を併せて判断して免許等に関する処分を行うものとされていた。
(6)国と地方の関係
国と地方の関係については、地方公共団体が環境影響評価に関する施策を講ずる場合にはこの法律に配慮することとされていた。
国と地方の関係については、当時と比べると地方における環境影響評価制度がかなり進展し、定着しつつあるため、必ずしも現状にそのままあてはめて考えることは適切ではないと考えるが、当時は具体的には以下のように整理していた。
ア.環境影響評価法案は、規模が大きく、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業について、環境影響評価を統一した手続により行うことを趣旨とするものである。
イ.法律の対象事業について、条例で法律に定められた環境影響評価の統一した手続等を変更させることは認められない。
ウ.法律の対象事業について、条例で手続等を附加し、このことにより、法律に定める手続等の進行を妨げ、又は瑕疵を生じさせるようなことは認められず、そのような条例を定めることはできない。
エ.法律の対象事業について、公害の防止及び自然環境の保全の観点から、条例で環境影響評価の一連の手続等を定めることもできない。
オ.法律の対象外の事業について、条例で環境影響評価の手続等を定めることとする

 

 

 

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