「海外調査資料の概要」(別冊)
慶応義塾大学教授 安富潔
A カナダ
カナダでは、外務省及び沿岸警備隊を訪問し、外務省法政策課担当官及び沿岸警備隊環境政策課、司法省漁業政策課の各担当官から調査事項に関する調査を行った。
まず、カナダでは、国連海洋法条約について、政府として条約の批准に向けて、現在、国内法の整備を図っており、1996.12.18にカナダ海洋関係法(An Act respecting the Oceans of Canada)草案が議会に提出されたところである。(資料1)、しかし、条約批准に向けては、漁業、汚染その他いくつかの問題についての国内法の調整が必要であり、批准の見通しは必ずしも明確ではない段階にある。これは、同法案にある海洋政策の具体的な政策決定が議会において決定されていないことによる。
1 領海関係
(1)「通航」の要件
「通航」の意味は、国連海洋法条約18条に示された内容によって明らかである。
ただ、外国船舶の領海における通航の要件に関する規定は、カナダ航行法(Canada Shipping Act of 1993)第660.2条にみられる。しかし、この規定は、環境保護目的のために定めた規定であり、国連海洋法条約における通航の要件とは内容が異なる。
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