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この点でとくに問題となるのは、国連海洋学委員会(IOC)あるいは国際海洋機構(IMO)が国連教育科学機関と協力して計画している海洋データ収集システム(Ocean Data Acquisition, System, ODAS)である。このシステムでは、各種のブイあるいは浮遊器材を用いて科学情報の収集が計画されている。すでに1972年にこのシステムに関する条約草案(21)が出されているが、最終的決定は第三次海洋法会議の結果をまって確定されることになっていた。この条約草案には、他の国の管轄権がおよぶ水域に流出したODAS機器の返還、ODASに対する不当な妨害・干渉が発生した場合における損害賠償、ODASの登録、安全基準などに関し、海洋法条約が規定していない、あるいは部分的にしか規定していない事項が含まれている。
(6)沿岸国の法令
排他的経済水域または大陸棚の海洋科学調査に関する海洋法条約のいくつかの規定は、沿岸国の法令について言及している。たとえば沿岸国は自国の領海を越える水域において実施される海洋科学調査を促進しおよび容易にするために、「合理的な規則および手続を設定するよう努力する」ものとされている(255条)。また条約は海洋科学調査を実施するにあたって遵守すべき条件(沿岸国が要求できる次項)を列挙しているが(249条1項)、裁量によって同意を与えないことができる場合においてなお同意を与える際には、沿岸国は法令に定める別途の条件を付することを認めている(同2項)。この条件には、調査が天然資源の探査・開発に直接影響を及ぼす場合において、調査結果の国際経路を通じての公表につき沿岸国の事前の合意を条件とすることを含めることができるむね明記されているが、その外の規制はないので、実質的に調査を無意味とするような不合理な条件でない限り、どのような条件を付すこともできるものと解釈できる。条約は法令に定める条件としているが、これは事前に法令によって付すべき条件を包括的に列挙することまでを求めているとは思われない。天然資源調査である限りにおいて、沿岸国は排他的経済水域または大陸棚に対する主権的権利に基づいてこれを規制する権限を当然にあたえられているはずだからである。
より重要なのは前者の合理的な規則および手続を設定することである。条

 

 

 

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