日本財団 図書館


排他的漁業水域での調査の際の一部の国による見本採取の禁止という主張が否定されたことを意味する。
次に、条約は、天然資源の探査および開発に直接影響をおよぼす計画の調査結果を国際的な利用に供することについては、調査への同意の条件として「事前の同意」を要求する沿岸国の権利を認めている。この規定は、資源調査を主たる目的とする調査に関するものであり、先に述べたエーゲ海大陸棚境界画定事件においてギリシャが主張した「天然資源に関する情報を入手する排他的権利」を海洋法条約が認めたことを意味する。沿岸国は排他的経済水域または大陸棚に関する科学調査に同意する見返りとして、詳細な情報を得る権利と天然資源に関する情報に関しては、これを排他的に独占する手段を手にしたともいえる。もちろんこの場合、調査を実施した国家は情報を入手するが、これを公表することはできなくなる。それは天然資源に関する情報をもたらす調査は、それが資源調査を主たる目的とする調査であるか否かにかかわらず、本来の純粋科学的調査ではないといっているのと同じである。本来の科学的調査でないとすれば、なぜ他の国が調査を実施するのかという問題のなかに、科学調査につきまとう戦略的な意味が隠されている。調査結果の公表が、沿岸国により調査に付される条件への違反とみなされて、調査の停止あるいは終止(253条)あるいは裁量による同意拒否(246条5項)の事由として取り上げられるおそれもある。
(5)海洋科学調査と設備の使用
条約は、沿岸国が自国の裁量によって同意を与えないことができる場合として、排他的経済水域または大陸棚における科学調査が人工島、施設および構築物の設置、運用または使用を含む場合をあげている(246条5項(c))。そして第一三部4節において、とくに海洋環境における科学調査施設または設備に関する規定を設け、海洋環境のいずれかの水域に科学調査のために施設または設備を設置し、使用する場合には、当該水域における科学調査の実施のために条約が定める条件と同一の条件に従うことを調査実施国に義務づけている(258条)。排他的経済水域または大陸棚の場合には、沿岸国が人工島、施設または構築物の設置および利用について管轄権を行使することが認めら

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION