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ある場合には調査船などへ同乗する沿岸国の権利を確保すること、予備的報告および最終的結果・結論を沿岸国に提出すること、沿岸国に資料・見本を提出すること、資料・見本・結論の評価を沿岸国に提供し、またはこれらの解釈を援助すること、調査結果が国際間の利用に供されることを確保すること、などが規定されている(249条1項)。さらに「自国の裁量により同意を与えない」ことができる場合(246条5項)については、その裁量権を行使するための沿岸国法令によって条件を定めることが認められており、この点について条約による制限がないばかりか、天然資源の探査および開発に直接影響を及ぼす調査結果を国際間の利用に供することについて事前の同意を要求する権利を沿岸国に与えている(249条2項)(12)
(2)科学調査の権利
海洋法条約は、何が海洋科学調査であるかについて定義規定を置いていない。大陸棚条約との比較で注目される点は、公海使用の自由を定める規定の列挙事項の1つとして「科学調査の自由」(第六部および第一三部の規定に従うことを条件とする)が明記されたこと、また排他的経済水域および大陸棚に関する第一三部の規定において、大陸棚条約にあった「実地調査」の概念が削除されたことである。従来は大陸棚の上部水域が公海であったことから、大陸棚条約では「実地調査」についてのみいわゆる同意制度が設けられていたが、海洋法条約のもとで排他的経済水域制度が導入された結果、200カイリ全域について同意制度が採用された。その意味では、抽象的には、科学調査の権利は制約を受けることになったともいえる。しかし、「実地調査」の概念が削除されたことにより、少なくとも従来の不毛な議論は乗り越えられたといえよう。海洋法条約上、沿岸国が自国の裁量により同意を与えないでよい場合は、調査活動の形態から見る限り、大陸棚の掘削、爆発物の使用、有害物質の導入、海洋構築物の使用などの場合に限られており、沿岸国によって裁量権が濫用されるおそれは少ないといえる。
また大陸棚条約では、大陸棚の探査およびその天然資源の開発が科学的調査を妨害することとなってはならないと規定していたのに対して、海洋法条約では、海洋科学調査が沿岸国の排他的経済水域または大陸棚に対する主権

 

 

 

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