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の公表性、調査の成果の普遍性を内容として含んでいた。たとえば宇宙条約は科学調査の自由を認めた上で(1条)、「宇宙空間の平和的な探査および利用における国際協力を促進するために」、その活動の性質、実施状況、場所とならんで、その「結果」について、国連事務総長、公衆、および国際科学会に対して「実行可能な最大限度まで情報を提供」し、かつ国連事務総長に提供を受けた情報について「迅速かつ効果的に公表」するよう措置する義務を課している(11条)。また南極条約が定める南極の科学調査の自由(2条)のもとで、締約国は国際協力を推進するために「実行可能な最大限度において」、科学調査計画の公表、科学要員の交換などとともに、科学的観測およびその結果を交換し、および自由に利用できるようにすることを定めている(3条)。海洋法条約においても、深海底については深海底の科学調査が人類の全体の利益のために行われるものとした上で、深海底機構は、利用可能な場合には、「調査および分析の結果を調整し、普及させる」ことを要請され、また締約国による科学調査の場合には、締約国は「調査および分析の結果が利用可能である場合には、機構を通じまたは適当なときは他の国際的な経路を通じて当該成果を効果的に普及させる」ものとしている(143条)。
これらの例の場合は、空間の法的性質そのものが一種の公共性を帯びており、したがって科学調査の自由とその結果の公表性との緊張が生じにくい(10)。たとえば宇宙空間は国家の管轄権を越えた区域であり、宇宙活動そのものが「宇宙への人類の使者」と性質づけられており、それゆえに国際協力の枠組が条約によって設定されているからである。南極の場合も、南極条約によって領土権が凍結され、その意味では地球観測活動を国際協力のもとで効果的に実施するために、国家管轄権を越えた区域としての擬制が導入されたといってもよい。さらに深海底およびその資源は、海洋法条約により、「人類の共同の遺産」(136条)として性格付けられ、これを管理・開発するために、国際機関が新たに創設されているのである。
これに対して、大陸棚や排他的経済水域については、事情が相当に異なる。これらにおいては、その探査・開発あるいは経済的利用に関して沿岸国の主権的権利が認められているからである。1958年のジュネーヴ海洋法会議にお

 

 

 

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