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国際法上の法制度下における科学的調査としては、宇宙空間の探査や南極地域での科学調査がある。宇宙空間の探査について、日本の国内法令を一瞥すると、宇宙開発事業団法(昭和44年法律50号)が存在するが、それ以外は条約によって規律されているものと思われる。これに対して、南極地域の科学調査については、「南極地域の動物相及び植物相の保存に関する法律」(昭和57年法律58号)、同施行規則(昭和57年外務省令6号)という形で日本の国内法令が制定されている。
「南極地域の動物相及び植物相の保存に関する法律」は、南極地域における日本国民の一定の行為を禁止した上で(3条)、右の行為をするためには許可が必要とする法的システムを規定している(5条)。すなわち、国による南極地域の科学的調査、及び、南極条約上の監視員の監視活動を除き、南極地域で学術研究や博物館資料の収集を希望する者は、外務大臣の許可制に服する(4条)。許可申請に対して、外務大臣は文部大臣と協議することとされ、許可する場合には外務大臣の許可証が発行されるのである(5条)。また、外務大臣は、許可を受けた者の調査結果について報告を求めることもできる(6条)。さらに、右のような許可システムは、刑事罰によって担保されているので、その実効性も相当に高いと言えるのである。
上記の南極の科学調査に関する国内法は、国際制度としての科学的調査を規律する国内法令として、外務大臣と文部大臣の協議手続による許可制など、海洋科学調査に関する国内法制度を議論する場合に参考になる部分がある。ただし、「南極地域の動物相及び植物相の保存に関する法律」の法的システムは、南極の「動物相及び植物相の保存」という公益を守るための規制システムとして仕組まれている。法が守るべき公益(%南極の自然生態系)が明確である分、規制の仕組みも簡明かつ強力なものにできる。海洋科学調査についても、沿岸国として守るべき公益が明確な部分については、外務大臣の許可制といったシステムも可能であろう。しかし、純粋海洋科学調査全体に網をかけるとすれば、その対象となる海洋科学調査の定義が曖昧で、従ってそこで保護される公益が何かが必ずしも明確ではな

 

 

 

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