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舶について一定の基準による「気象」及び「水象」の観測を義務づけ、その結果を気象庁長官に報告する義務を課している(7条)。航空機についてもほぼ同様のシステムがある)。気象庁には、気象・水象その他について収集された観測成果や情報を直ちに発表することが公衆の利便を増進する場合に、これを発表して公衆に周知させるという努力義務が課される(11条)。
右のように、気象業務法は、「気象業務」の観測について、その公共的性格を反映させた規制システムを構築している。さらに、気象庁以外の者が気象観測を行う場合には気象庁長官に対する「届け出」が義務づけられ、「届け出」た者には気象庁長官に対する観測成果の報告義務が課されるが、国による一定の費用負担や機器の貸付等の助成が行われるという仕組みも採られている(気象業務法6条3項、同4項、12条)。船舶や航空機による観測についても、ほぼ同様の法的仕組みと言える。
日本の排他的経済水域・大陸棚において、外国船が「海洋科学調査」を行う場合に、現在の気象業務法の規制がどこまで及ぶのかは、必ずしも明らかではない。しかし、外国船が調査した結果、わが国の公益と密接に係わるような調査の成果(例えば地震予知や海底火山の噴火、気象変動の予兆、海流や海洋生態系の変化など)について、日本の国内法令である気象業務法のシステムの中に組み込む必要はあろう。もちろん、国連海洋法条約上も、沿岸国が海洋科学調査の結果、結論、資料等の提供を請求できるのであるが(249条)、国内法の問題としてわが国の「気象業務」の制度の中に取り込むことを考えるべきであろう。
ただし、気象業務法は、一定の公益性のある観測・調査のみを対象としており、純粋な研究目的・教育目的のための観測には射程が及ばないと解釈される。従って、純粋な「海洋科学調査」の全てについて、気象業務法による法制度が問題になるわけではない。「海洋科学調査」のカテゴリー全体をカバーするような日本の国内法令は、やはり存在しないものと思われる。
(B)南極地域に関する法的システム

 

 

 

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