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土の総合的利用といった観点からの調査であれば、国土庁の所掌事務である(国土庁設置法4条)。
これらに加えて、「国際機関との協力」や「通商航海に関する利益の保護及び増進」は外務省(外務省設置法3条)、「学術」については文部省(文部省設置法4条)、「統計調査」については総務庁(総務庁設置法4条)の任務といった具合になる。わが国の行政法規は、基本的に各省庁の事務分配を単位とする縦割りのシステムによっており、純粋な「海洋科学調査」について国連海洋法条約を受けた国内法の仕組みを想定するのはなかなかに困難であるように見える。他国や国際機関からの申請に対して、関係する行政庁が適宜集まって協議のうえ閣議決定によって「同意」するといったことも考えられるが、右のような手続は国の重要な課題に関する慎重な意思形成のために用いられるのが通常なのであって、純粋な「科学的調査」の持つ本質的性格とは相容れないのではないか。
以上の検討から、海洋法条約を受けた「海洋科学調査」について、沿岸国としての権限を行使することを任務とする行政機関を明確にする必要がある。そして、外国や国際機関による申請の手続や審査基準、不服申立て手続など、「同意」のルールを決めなければならない。そして、担当する行政機関は、「同意」に際して、国連海洋法条約の発効に伴う8つの法律を所管する農林水産大臣と運輸大臣、鉱業法や日韓大陸棚南部共同開発協定の実施に伴う特別措置法に係る通商産業大臣などと「協議」するという法的スキームが考えられる。
〔4−2〕「海洋科学調査」の規制システム
排他的経済水域・大陸棚における「海洋科学調査」について、これを正面から規律する現行の国内法令が見当たらないことについては、すでに繰り返し言及した。しかし、「海洋科学調査」の少なくとも一部を包含する法制度、あるいは、何らかの意味で「海洋科学調査」の法制度と類比するに値する法制度は、幾つか存在する。以下、現在の日本の法令から、(A)気象業務法、(B)南極地域の動物相及び植物相の保護に関する法律、(C)文化財保護法、の三つの法律の定める法的仕組みを検討して、「海洋科学調査」に関する将来在るべき立法措

 

 

 

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