外国船舶によるわが国の大陸棚・排他的経済水域の調査に対する措置
−行政法学の観点からの検討−
立教大学教授 橋本博之
〔1〕間題の所在
国連海洋法条約の発効により、日本も、日本の排他的経済水域・大陸棚に関する国際法上の様々な権能が賦与されることになった。沿岸国は条約の範囲内で排他的経済水域・大陸棚についての「管轄権」を他国に対して有効に行使することが可能となり、沿岸国はこれらの領域に対する一定の「主権的権利」を認められた。ここでの「管轄権」ないし「主権的権利」という法概念は、それ自体が日本の国内法において自明のこととして定義されるものではない。もちろん、日本の国内法令が条約の解釈を逸脱したり、条約上課せられる義務と抵触することは許されない。しかし、「主観的権利」ないし「管轄権」といった法概念については、条約の枠内で日本の立法機関が自らの裁量によって国内法令を整備することを許す趣旨と理解されるであろう。
日本について国連海洋法条約が効力を生じたのにあわせて、これに関連する8つの法律が施行された。今後は、海洋法条約の枠組みを前提に、日本国内の行政法令がどのような形でこれを受けて、海洋の管理・規制の法的システムを構築するのかが極めて重要な課題となる。とりわけ、排他的経済水域・大陸棚については、そのエリア内部における人(私的・公的の如何を問わない)の活動を対象に、行政作用として一定の規制をかけるという法的システムが構築されなければならない。このような場合に、日本の行政法が法治主義の原則の下
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