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にある以上、行政組織及び行政作用を根拠づける法令は絶対に必要である。同時に、例えば排他的経済水域・大陸棚での調査や開発を規制する法的システムを作った場合に、それに対応した申請のための事前手続、規制システムの実効性を担保する海上警察等の法執行制度、さらに、申請を拒絶された者のための事後的な救済手続きも整備しなければならない。
本報告は、日本の国内行政法学の観点から、海洋法条約発効後の排他的経済水域・大陸棚の管理の法的システム構築に向けた議論を深めるという意図の下に、現時点での関連する日本国内法令を分析してその問題点を指摘するものである。
 
〔2〕排他的経済水域・大陸棚の科学調査
〔2−1〕海洋科学調査と資源探査・開発
平成8年2月から4月にかけて、中国が東シナ海の日中中間線よりも日本側において石油試掘等の海洋調査を行ったことが報じられている。わが国が国連海洋法条約を締結し、これに基づいて日本の国内法令として排他的経済水域・大陸棚を設定するという状況下においては、わが国の排他的経済水域・大陸棚における外国船による調査活動についても、同条約を受けた国内法を仕組む必要があるのは当然であろう。その場合に、法令が適用されるのが領海外の海洋上であるという特殊性を踏まえた法執行作用(実力行使を伴う法令の実効性確保の作用)のシステムも不可欠になる。
国連海洋法条約は、排他的経済水域・大陸棚の沿岸国の管轄権として、そこでの海洋科学調査を規制・許可・実施する権利を持つことを定める(246条1項)。外国船がそこで海洋科学調査を行うには、沿岸国の同意が必要であり(同条2項)、他方で、他国又は権限のある国際機関が一定の目的(平和的目的かつ全人類の利益のため海洋環境の科学的知識を増進させる目的)で行う海洋科学調査計画について、沿岸国は同意を与える義務をおう(同条3項)。この「同意」制度こそ、国連海洋法条約における海洋科学調査のレジームの根幹部分と言える。
海洋科学調査に関する沿岸国の「同意」の意義や、条約が「同意」制度を採

 

 

 

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