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(2)EEZに関する船舶起因汚染に関する立法管轄権
この船舶起因汚染に関する立法管轄権について、国連海洋法条約は「いずれの国も、権限のある国際機関又は一般的な外交会議を通じ船舶からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、国際的な規則及び基準を定めるもの」とし(第211条(1))、領海とEEZに関しては、次のように書き分けている。すなわち、領海にあっては、「沿岸国は、自国の領海における主権の行使として、外国船舶(無害通航権を行使している船舶を含む。)からの海洋汚染を防止し、軽減し及び規制するための法令を制定することができる。この法令は、第2部第3節の定めるところにより、外国船舶の無害通航を妨害するものであってはならない」(第211条(4))。EEZにあっては、「沿岸国は、第6節に規定する執行の目的のため(for the purpose of enforcement as provided for in section 6)」、自国の排他的経済水域について、船舶からの汚染を防止し、軽減し及び規制するための法令であって、権限のある国際機関又は一般的な外交会議を通じて定められる一般的に受け入れられている国際的な規則及び基準に適合し、かつ、これらを実施するための法令を制定することができる」(第211条(5))と規定している。
領海に対する立法管轄権としては、外国船舶の無害通航権を妨害するものでない限り、国際基準とは無関係に独自の国内法令を制定する権能を認めているのに対して、EEZに対する立法管轄権は、国際基準に適合し、かつそれを実施するための法令を制定する権能に限定している。それのみならず、EEZに対する立法管轄権は、「第6節に規定する執行の目的のため(for the purpose of enforcement as provided for in section 6)」に行使されなければならない。通常は、一定の目的を達成するために沿岸国は立法権能を行使し、それに従属する形で執行権能が行使されるのであるが、ここでは、EEZに対する立法権能行使の目的が「執行」のためとされ、立法権能が執行権能に従属する形となっている。このEEZに対する沿岸国の立法権能は、当該海域における沿岸国の利益を保護するための立法権能とはいいがたく、国際的な規則及び基準を執行するための立法権能にすぎない。その意味では、沿岸国の権能というより、国際社会の共通の規則及び基準を実施するという役割

 

 

 

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